「春希先輩かっわえー!」
「昔から顔だけは良かったんだな」
「顔だけはってなによ」


アルバムをパラパラと捲る音。懐かしい写真が沢山だ。幼い翼や美咲。中等部の時の明良。

私が写った写真も大量にある。かなり昔の無愛想な写真もあれば、最近のであろうカメラに向かって歯をみせて笑う写真もある。


「あ、これ蛍のお兄さんやん」
「えぇ!?」


蜜柑ちゃんが蛍ちゃんに見せようとした写真を私が先に見る。
そこには確かに昴が居た。私と秀も。初等部の頃だ。
なぜ特力の教室にこの写真が。


「初等部の頃の写真があるなんて…」


頭を抱えたくなった。お願いだから見ないでくれと。


「なんか蛍のお兄さんも櫻野代表も春希先輩も今と全然雰囲気違うなー」


その写真を見つけてからはずるずると私達3入の幼い頃の写真が出てきた。カメラに向かって無邪気に笑っている楽しそうな写真。


「あぁもう見ないでよー」
「減るもんじゃなし」
「ていうか、春希先輩は蛍のお兄さんと幼なじみなん?」


写真から私に目を向けた蜜柑ちゃんが聞いてきた。


「まぁ、幼なじみだよー。秀ともね」
「えー!意外や!どんな性格やったん?この写真ではあんな冷たい人には見えんけど…」


蛍ちゃんも興味深そうにその話を聞いている。自分の知らない実の兄の話だ。そりゃあ気になるだろう。


「昴は…昔から変わってないかもなぁ」
「えー、絶対昔のが優しそうやー!」


そういえば。クリスマスの夜を思い出す。

まだあの熱や手の感触を覚えてる。この写真の時とは全く違う、ゴツゴツした大きな手。

思い出して1人で恥ずかしくなっていると1枚の写真が目に留まった。


静音ちゃんとの写真だ。


「お、静音ちゃんじゃーん。春希ちゃん静音ちゃんと仲いいもんな」


明良がその写真を見ながら言った。すぐ側には明良と私が一緒に写った写真もあった。
中等部の時の写真。私に初めて出来た親友が静音ちゃんだった。
昴や秀は幼馴染みだが、親友とはまた違うものだ。


二人に話していない事も静音ちゃんには話した。それでも黙って受け入れてくれたのだ。
きっとあの二人もそうだと信じている。だけど、言えない。


「でもさー、俺が来たときには春希ちゃんこの写真みたいに今井達と仲良くなかったよな」
「そうなん?」


静音ちゃんの写真をみていたかと思えばまた昔の話し。
興味津々に蜜柑ちゃんと蛍ちゃんがこちらを見ている。男女間の恋愛問題かと中等部組は楽しそうだが、残念ながら違う。


「まぁ、いろいろあって」


適当な話しで濁せる自信もなく、それだけ言った。
つまらなそうにブーイングする翼達だったが、明良は何か察したのかすぐに違う話題を出してくれて助かった。



もう帰ろう。








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