まずは鳴海先生と教員部屋に。
鳴海先生の「無事学園に着きました」報告に付き合っているのだ。
私を教員部屋に入室させるなり鳴滝先生は「ちょっと待っててね」とハートを飛ばしながらどこかに行ってしまった。
今はどの学部も学年も授業中のようで、ほとんどの教師はここには居ない。
鳴海先生が報告に行っている間、こんな所で暇だな。教員部屋をぐるりと見渡した。
綺麗なデスク、可愛らしいデスク、散らかり放題なデスク。
あ、あれは鳴海先生のデスクだろうな。なんて教員部屋の観察をしているそんな中、懐かしい顔を発見した。
しばらくその顔をじっと見つめているとその人物と目が合う。向こうも私の存在に気付いたらしく。
「おや、春希さん」
穏やかに、とても懐かしい声。そして相変わらず仏様のような顔の野田先生だ。
鳴滝先生の話を聞いた限り、今はアリスで異次元の旅かと思っていた。なのでまさか今日ここに居るとは。
嬉しくて野田先生に駆け寄った。
「おかえりなさい。今日でしたね帰ってくる」
「うん!野田先生、またアリスでどこか行ってるかなと思ってた」
「いやぁ帰ってきたのは昨日の夜なんですよ」
今回は縄文時代に行っていまして、なんて続けるタイムトリッパーの野田先生。昔からの、私が学園に来た時からの知り合いだ。
当時まだ学生だった野田先生には能力別クラスが同じという事もあり、とても可愛がってもらった。
「文化祭も近いのでなるべく安定したら良いんですが……」
腕の制御ブレスを撫でながら野田先生は言った。
話したい事は山のようにあるが、報告とやらを終えた鳴海先生がタイミング悪くやって来た。
幸せな時間は終了のようだ。
「鳴海先生ー!ヤボですよヤボ!」
ぶーぶーと文句を垂れていると、野田先生にまあまあとたしなめられたので何も言うまい。
目ではしっかり訴えるが。
「さて、久しぶりの再会嬉しいでしょうが、春希ちゃんは今から高等部の校長先生に挨拶でーす」
「ええええー!?」
これは、今日鳴海先生と交わしてきた数々の冗談と違い心の底からの悲痛な叫びだ。
「やだやだー野田先生といるんだもーん」
首をぶんぶんと振ると、鳴海先生のひきつった笑顔が見えた。
「まあまあ春希さん」
再び野田先生のたしなめが入る。
「私も今から能力別クラスの授業ですし、またゆっくり話しましょうね」
「ええー……」
新しく入った子と訓練しなきゃいけないんです。そう張り切る野田先生に(嫌々)別れを告げ、 未だに心情を隠せぬひきつった笑顔の鳴海先生と校長室に向かった。
- 2 -
←