昴を追ってバルコニーまで出た。屋外なのに全く寒くないのはアリスのお陰だろう。
「どうかしたの?」
「いや、どうもしていない」
「…………」
……何だか寒くなってきたのは気のせいだろう。
「……スポンサーのおば様達と踊ってきた?」
「いや、ダンスは苦手だからな」
バルコニーのベンチに隣り合わせに座る。
場内とはうって変わってここは静かだ。顔を上げるとチラチラと星が見える。
「さっき初等部の校長と話していただろ?」
急に昴が口を開いた。どうもしていない、なんてやっぱり嘘だったのか。
可笑しくなって笑ってしまった。
「見てた?」
「まあ」
いつもと変わらない様子でそう答える昴。
木が大きく揺れているのは風が強いからだろう。ここは風が吹いてこない。
「…春希、」
昴が私の名前を呼んだ。条件反射で昴の顔を見ると当たり前だが目が合い見つめ合う形になる。
力なく「はい」と返事をし、ゆっくり昴の口が開いた時どこからか「今井先輩!!」と、とても空気の読めない声が聞こえた。
これもまた条件反射でお互い手を離し声のした方をみる。
「せんぱーい!ハマグリ手にいれましたー!!」
オカッパヘアの中等部くらいであろう男子生徒がバルコニーにひょっこり顔をだし、楽しそうに笑っている。
ハマグリがどうした、と叫びたい。しかし彼に非はないのだ。
「…わかった」
昴が立ち上がった。
私はハマグリに負けたのか。何を言おうとしていたんだ。期待していいのか
考える事は沢山あるがとりあえずジト目で昴をみる。
「……春希は入らないのか」
「いい。まだしばらくここに居る」
「…そうか」
それだけ言って昴はハマグリの元に行った。
私はとりあえず深く深く溜め息をつく。
クリスマスはやはり浮かれてしまうものなんだろう。
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