「わ、」
浮かれきっているのは私もで、静音ちゃんと楽しく話していると後ろにいた少年にぶつかってしまった。
「あー、ごめんなさい」
「……」
ギロリ。初等部の子だろうが思いっきり睨まれた。
謝ったじゃん!と少し苛ついたがここは大人の余裕を見せて、痛かった?なんて猫なで声を出してみる。
しかし、なぜ初等部の生徒が役員控えのようなこんな所に居るのか。
「…ん?もしや生徒会なの?」
「そうだけど。てめぇもそうなのかよ」
「て……」
男の子の放った言葉に、あんぐりと開いた口が塞がらない。
てめぇ、だと。
生意気そうな目をしているけど、この子は生意気なんていう次元じゃない。
「てめぇはないでしょ…年上にそんな口きいちゃダメだぞー」
「は?なんだよババァ」
秀の「そろそろ行こうか」という声がこの状況を救った。
明らかに馬鹿にしたよう顔の少年はツンと歩いていった。
怒りの元凶のガキが居なくなり、この怒りをどこにぶつければ良いのか。
あのまま、苛ついたまま開会式を終え浮わついた会場をぼんやりと眺める。
「…ババァ」
あの生意 気な少年は日向棗くんと言うらしい。初等部にしてスペシャルらしく、危険能力系。
なるほど、だからあんなにスレてるのか。しかしババァと言った事は許さない。
「はぁ」
「なによ辛気くさいわね」
「だって、ババァって…」
「七つも離れてたらそりゃ私達はババァよ。開き直りなさい」
「あぁ〜」
そこらへんにあったテーブルに突っ伏した。立食式のパーテ ィーだがイスとテーブルのセットもしっかり用意されている。
「というか春希いつまで座ってるの?あなたがずっとそうなら私はもう行くわよ」
「ええええ」
じゃあねと立ち上がった静音ちゃんのドレスの裾を掴む。
「私もいくー!!」
泣きついて私も立ち上がる。しかし静音ちゃんは黙ったままだ。
なんだ。
静音ちゃん?と名前を呼ぶとニッコリとどこかの猫かぶりのように綺麗に笑った。
「あ、あの…?」
「今日はもう会えないわよきっと。じゃあね」
「え?」
意味がわからない。
私はそう言い残し颯爽と去っていった静音ちゃんの背中を呆然と眺めるしかなかった。
散々な日だ。
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