はぁっと息を吐くと空気が白くなる。当たり前の現象はまるで魔法のようだった。


病院の帰り道、この寒い中屋外をうろうろしている中等部の生徒を見つけた。
あの後ろ姿は、もしかしたらのばらちゃんかもしれない。


「のばらちゃん?」


振り向き、こちらを見てすぐに冷たい色の瞳を丸くさせた少女。私の勘は当たったようだ。


「ひ、久しぶり…」


可愛い後輩の一人。会う事は少ないがとてもなついてくれている。私も自然と気を許してしまう、大切な後輩だ。


「久しぶりー。あれ、のばらちゃんはクリスマスの飾り付けいかないの?」


今日はクリスマスの飾り付けがあるはず。私は体の事を考え無理だと判断され不参加。
しかし寮でダラダラ過ごすのは許さないと無理やり教師に病院に行かされていたのだ。

しかも今から補習。


「あ、えっと…私なんかが行っていいの、かな…って…………」


この性格は相変わらずのようだ。
危険能力系一の美少女と言っても良い程の容姿を持っているんだから自信を持てば良いのに。勿体無い。


「それより…………えっと、お、おかえりなさい……」
「はーいただいまー」


よく言えましたと頭をくしゃくしゃに撫でる。
素直で真っ直ぐだから好きなのだろう。同情、というのも大きいけれど。


「一人なの?」
「え?」

彼女は友人が極端に少ない事を知っている。だからのばらちゃんが一人なのは特別おかしな事ではないが、のばらちゃんにはべったりくっつき虫がいる。


「…ペルソナは?いつも一緒でしょ?」
「あぁ…今日は…ていうか、あの、今は一緒じゃない…」
「そっかぁ」


安心した。

私は彼が苦手だ。危力系や一般の生徒、教師陣もほとんどがペルソナを苦手としているがそうじゃない。そういった類の苦手ではない。


「のばらちゃん、クリスマスの飾り付けに行きたい?」


今ペルソナの事を考えていても仕方ない。
私がのばらちゃんにそう聞くと、のばらちゃんは再び目を丸くした。そして小さく頷く。

可愛いな。


「ねぇ、会場まで一緒に行ってくれない?私は飾り付けできないけど、ちょっと見てみたいんだあ。
迎賓館だよね?」
「い、いいの?」


のばらちゃんは先程丸くした目をキラキラと輝かせて、頷きゆっくり私のコートを掴んだ。
この仕草、私が男ならイチコロだ。


蜜柑ちゃんも飾りつけしてるのかな。






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