なんだか大変な事になっているらしい。

昴の妹の蛍ちゃんは重症で蜜柑ちゃんが何か関わっていて。
うまく言えないが、大変な事だ。


「はぁ」


そんなこんなで執行部と学園の関係者を含めた会議があっている。学園の大人達だけでやれよと言いたいが言えない。
こういう会議とかいった真面目な場はすごくすごく苦手で体調が悪いと嘘をついて逃げてきた。

やるなら夜中まで続きそうな濃い会議の五分の二は参加した。まぁ許されるだろう。


しかし、この騒ぎのお陰で授業はない。知り合いは教師含め皆会議でいない。
暇だ。

無駄に高等部の廊下を歩く。いつもは決まったルートしか歩かないので、たまには通った事のないルートを歩いてみたりして暇を潰す。


ーーーーこんな所に動く絵が飾ってある。
こっちは喋る石像。
医務室から音楽室へはこんな道があったんだーへえー。

「………はぁ」


もう一度溜め息を吐く。無意識に俯いていた顔を上げる。


あれ、と声をもらしそうになった。見覚えのある顔。あれは明良だ。

キョロキョロと挙動不審気味だ。二股が彼女にバラでもしたのか。


「明良ー!」


いい暇潰しだろう。いや、こいつはいろんな意味で人気者だから私の相手なんかはしてくれないかもしれない。
そう思いながらも話しかける、やはり驚いた様子で「よ、よぅ春希ちゃん」と明良は片手をあげた。


「どうしたの?」
「え?いやぁ…」
「浮気が本命にバレでもしましたかー?」
「ははは……いやーん」


この覇気のなさ。ノリの悪さ。
なんか、怪しい。

明良の後ろに立ち顔を下に向けているツレと思われる奴等も怪しい。ていうか、


「翼?」


私が名前を呼ぶと翼(と、思われる人)は肩を揺らし明良はしまったという顔をしていた。

こっちがしまった。だよ。
関わりたくもない事に関わるのはごめんだ。

後ろに居る三人をよく見たら蜜柑ちゃんも居る。何をしているかはわからないが良い事ではないだろう。


「……はぁ」


翼が何をしたかはわからないが、既に罰則印を付けられるような事をしているのに。
これ以上、学園に目をつけられるような事はしないで欲しい。


そう思い目の前にいる明良の手に触れた。


「え、春希ちゃん?」



―――高等部の穴、探してる、ガリバー飴、助けたい


本来私のアリスではないせいでかなり曖昧にしか情報は入って来ない。

曖昧な情報を繋ぎ合わせたわかった事は、怪我を負った蛍ちゃんを助け飛田くんのアリスを取り戻したい。その為に高等部にあると噂される外に繋がる穴を探しているらしい。


蜜柑ちゃんは危険を省みない子のようだ。



(それで迷惑するのは蜜柑ちゃんだけじゃないんだけど…まぁ、仕方ないか)


自己犠牲という言葉も知らない子供にはお説教垂れても無駄だろう。
二人の男を除けば。


わざとらしく溜め息を吐き明良から手を離した。


「ごめんね、呼び止めて」


翼と目を合わせないように明良に言った。


「急いでるんでしょ?」
「え、あ、いやいいんだけど…」
「じゃ、生徒会は夜中まで会議だから」


もう行くねと背中を向ける。
それは私なりの手助けだったんだけど、どうだろう。






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