真実は、私と大切な人達しか知らなくていい。
「初等部から紛失者?」
静音ちゃんが頷いた。
優等生賞で帰省していた初等部生からアリスの紛失者がでたようで。しかもそれは文化祭の時にちょっと話した蜜柑ちゃんの友達の飛田くん。
学園外の人間でアリスの紛失が多発しているという話は聞かされていたが、学園の生徒から紛失者がでるとは。
「可哀想に。しばらく隔離されていて、今はもう学級に戻れたようだけど。
何もないように振る舞っているみたいだけど、アリスがいきなり無くなるなんて不安よね」
授業の合間の休み時間。賑わう教室の中、ふぅ、と息を漏らした。静音ちゃんはいつも、表情を変えずに溜め息をつく。
困った事、悲しい事、何か静音ちゃんを揺さぶる物があったとしても、いつもの表情で溜め息だ。
「アリスは自分の一部だもん」
可哀想に。そう呟いたと同時に緊急サイレンが鳴った。
「なんだろう」
先程までとは違うざわつき方をする教室。当たり前だが緊急サイレンなんて滅多に鳴らない。
そんな中教室の扉が開き、次の授業の教師が入ってきた。
「みなさん、しばらく外出禁止です。校内にいてください」
この時間は自習ですと付け足した教師は教室から出ていった。
本当になんなんだろうか。
気になるも知る術はない。
自由な教室でそのままお喋りを続ける。
秀や昴、明良も好きなようにしているようで。高等部だからこうだが、今ごろ中等部は大変なんだろうな。想像力豊かで落ち着きのない中学生達。野田先生は大丈夫なんだろうか。
そんな事も考えつつ話をし、一時間近くたった時慌てた様子の教師数名が教室に入ってきた。
気にする生徒、気にしない生徒がいる中あれよと言う間に昴はどこかに連れていかれ、生徒会は本部の第5会議室に集合と収集がかかった。
「外出禁止令は…?」
呟くと呆れ顔の静音ちゃんに、早く行くわよと手をとられた。
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