話したくない。話したくない。誰にも会いたくない、隠れていたい。それでもいつも、私を照らす。
だから嫌い、だから嫌い、だから嫌い。
離して、お願い。傷つくのもつけるのも、もう沢山だ。恐い。恐い。痛い。悲しい。寂しい。
逃げて逃げて逃げて。
暗やみの中走り回る姿は滑稽で、皆が私を笑っていた。それでも私は逃げ続ける。
「秋は芋の季節でね、トラックに乗ったおじさんが芋を売りにくんの」
「芋?」
「そう、芋。さつまいもね」
すっかり秋になり落ち葉だらけの通学路を昴と並んで歩く。
文化祭も終わり、冬はもうすぐそこ。
今日は早起きだった。
いつもは学校に間に合うギリギリの時間に起きているが、何故か今日は早く起きしてしまった。不思議と二度寝も出来ず早くから食堂に行く事にした。
そしたら昴に会ったのだ。
いつもこの時間に朝食を食べているのかと聞くと頷かれ、流石としか思えなかった。並んで一緒に朝食をとり、そのままバイバイというのもあれなので、一緒に登校している。
「病院にいた時にね、田舎の小さい病院だったんだけど。ちょうど今くらいの季節でいつも芋売りのおじさんがトラックで走ってたの」
「芋売りの…」
三歳の時から学園にいた私には初めて見たものだった。五歳までは学園の外にいた昴は知ってるかなと思ったら記憶にないと言われ、その話をしていた。
「学園にきてからはたまに落ち葉を集めて芋を焼いてはいたがな」
「あー、初等部の時にやってたねぇ。またしたいなあ」
「落ち葉掃除のついでに一人でしておけ」
「一人は嫌ですー」
昴は小さくあくびをした。
秋の朝。夏や春より、秋や冬の方が好きだ。
ツンと冷えた空気に、どこか緊張した雰囲気がたまらない。
「そういえば、アリス紛失の噂はもう知ってるか?」
さっきまで眠そうにあくびをしていた昴とは打って変わって、真面目な調子で言う。
というかこのまま行くとかなり早い時間に学校につく。いったいこいつはこんな早くからいつも学校で何をしているんだろう。
「クラスでも結構騒がれてるからね。たーいへーん」
最近話題のアリス紛失事件。
高等部では結構話題になっているし静音ちゃんからも聞いて知ってはいる。
「学園内では何も騒ぎがおきないといいがな」
「ははは。まぁ何かあってもとばっちり受けなきゃ良いよ」
「とばっちり、な」
ポツリと呟いた昴。ちらりと見るといつもと変わらない顔。
そういえば、と思い出した事があった。
話題に出すのはどうかなとも思ったが、行平校長が言っていた事だ。今井櫻野が力に加わったと言っていたのを思い出した。
気にはなるが、こんな爽やかな朝にする話題だろうか。
「それとテストはどうだった」
「え?あー、まぁまぁかな」
いきなりテストの話題をふられ足が止まった。頭は完全に違う事を考えており、いきなりテストの事は考えれずについつい。
「まぁ秀才今井くんには遠く及ばずですよ」
そんな話をしてるうちに校舎についた。行平校長が言っていた話題はお預けか。
しかし、朝のショートが始まる30分前。ここから教室までは5分。流石としか言えない。時間前行動すぎる。
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