「…西有、大丈夫か?」


目覚めたばかりのはっきりしない意識の中、声がした方をみると岬先生。


「……」


なんで岬先生が居るんだろう。不思議だ。学園七不思議に入るかもしれない。
しばらくぼんやりしていると、ここがどこか理解できた。白い天井白い壁。


「…病院?」


目覚めたばかりで声はかすれている。顔もひどいだろう。それを、あぁ、20代も後半とはいえまだまだ若く、初等部女子から人気が高い岬先生にみられた。ショックだ。

ていうか、なぜ。
ゆっくり記憶を辿る。



そうだ。文化祭の日に気分が悪くなった。
歩いていたら、ふわふわと雲の上を歩いているような感覚に襲われ動悸が激しくなり、これはダメだと思い近くに居た先生に助けを求めたのだ。
それからの記憶はない。


「あの時いたの岬先生だったんだ…」
「覚えてないのか?」
「まあぼんやり……」


まだ声はガラガラ。
あれはまだ確か朝だった。今は窓の外をみる限り、夕方。
昨日見た生徒会室からの夕日と同じ。


「貧血だったらしいが…」
「そうですか」


体質系の劇を見に行きたかったのにな。終わってしまっただろう。残念。


「岬先生ずっとここに居たんですか?」


横になっていた体を起こすと、岬先生は大丈夫かと慌てて手を伸ばしてきた。たかが貧血だし、大丈夫ですとその手を軽く振り払う。


「いや。文化祭には出ていたが、もうやる事もないし西有の様子を見に来たんだ。目の前で倒れたからな、気になるだろ」


目線を少し落としながら話す岬先生。この歳にして女性馴れしていない感じが良いんだろうな、とかぼんやり思う。
顔は整っているし、初等部女子から人気なのもわかる。


「そうだ、目が覚めたら呼んでくれと言われたから、医者を呼んでくる」
「はーい」


岬先生は病室を出ていきバタンとドアが閉められる。それを見てベッドに倒れ息を深く吐く。

そういえば要くんは元気なのだろうか。
診察にきたり入院した時は、よく要くんと話をしていた。翼達と仲が良いからと特力の教室に遊びにきていたし、私にもなついてくれていた。

私の体の事を翼達には言っていないから、私が診察にきた事も入院した事も二人の秘密だと口止めをしていたな。懐かしい。

時間があったら会いにいこうか。






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