ホグワーツ特急を降り馬車(私の知っている馬車はこんなのではなかった)に乗りホグワーツに向かった。

お城。古城。
これもまた私の想像を越えていた。


「まずは校長室に行きますよ」

マクゴナガル先生とダンブルドア校長についていく。
城内には私達3人以外の姿はなく、とても寂しい。

一つの扉の前にくると立ち止まった2人をみて、ここが校長室なのだとわかった。
なんだか美味しそうな合い言葉をダンブルドア校長が言うと扉の前にいた怪獣のような何かが退いて扉は音をたてて開く。

腰が抜けそうだったが案内されるまま校長室に入る。


「じゃあさっそくじゃが、組み分けといくかの」

座りなさいといわれ近くにあったイスに座る。
するとダンブルドア校長がどこからか汚い古い帽子を持ってきてマクゴナガル先生に渡した。そのまま先生は私の頭にその帽子をのせる。汚い。



『これは珍しい東洋のお嬢さんじゃな』
「うわっ」

頭に直接響いてきた声に驚いて間抜けな声をあげてしまった。

『頭も良い、勇気もありまっすぐな心を持っておるな。それに優しい。じゃがどこか狡猾なところもあるようじゃの』

ぶつぶつと考えるように話す帽子に自分の全てを見られているようで気持ちが悪い。

『どの寮にいってもやっていけるだろうし、どの寮にいくかによって人生を左右されるじゃろう』
「人生を?なら良い人生を送れるような寮に入れてね」
『希望は?』
「どこがどんな寮かわからないから希望なんてないけど…」
『じゃあ、賭としようかの』

帽子は一呼吸おいて私の頭に直接響いてくるような声でなく、きっとどこかについてあるであろう口から『スリザリン!』と叫んだ。


「スリザリン?」

マクゴナガル先生の寮ではない。それしかわからないが、私はスリザリンになったようだ。

マクゴナガル先生が私の頭から帽子を外す。


「あなたは今日からスリザリン生です。寮には寮監の先生が案内してくれます。そのうち来るでしょう」

どうして誰も呼びに行ってないのに…と思ったがそれも魔法だろう。便利なものだな。なんて考えていたらダンブルドア校長が口を開いた。

「君がスリザリンとはのぅ。意外なようなそうなる事はもうずっと前から決まっていたような。…不思議なものじゃ。
君は…グリフィンドールになると思ったんじゃが、まぁいい。
そうじゃ、君が両親からもらった箱はなんだったのかの?」
「あ…」


そういえばそうだった。


キャリーバッグを開き中から縦長の箱を取り出し、フタを開けるとそこには一本の杖が入っていた。


「…杖?」

木の枝のようなそれを手にとりまじまじとみる。黒い、長くも短くもない杖だ。

「魔法を使うには杖がいるんじゃよ」
「杖が?」

杖から声の主に目線を移す。
魔女っ子だ。

「一緒に買いに行ったんじゃないのか?」

その発言に首を横にふるとダンブルドア校長とマクゴナガル先生は目を見合わせた。

「…君の両親が準備してくれたんじゃろう。どれ、試しに振ってみぃ」

言われた通り杖を振る。


するとどこからか風が吹いてきてキラキラとした光が杖から出て校長室の入り口に向かう。

「杖を振ってなんらかの反応を示すのは魔力がある証拠じゃ。自分に合わん杖を振ると…まぁあまり良い事はおきんのじゃが見る限り君にぴったりの杖なようじゃな」

合わない杖なんてあるのか。
両親が勝手にどこからか準備してくれた杖が私に合ったという事は、杖というのは誰にでも合う物なんじゃないだろうか。

そういえば駅に向かう間は居なかったしその間に買ってくれたのかもしれない。しかし杖はどこで手に入れたんだろうか。

いろいろ考えているとマクゴナガル先生が私の名を呼んだ。


「ミスカワウチ。スリザリンの寮監の先生が来ましたよ」

その発言に先ほどまで杖から出た光がさしていた入り口に目をやると、見るからに、見るからにおかしな怪しい黒い人物が立っていた。

黒い髪に黒い瞳に黒いローブ。鉤鼻に土気色の肌。十分に怪しい。
その怪しい人物はゆっくりと口を開いた。

「セブルス・スネイプだ」
「…あ、カオリ・カワウチです」


その雰囲気に戸惑い、ついクセで会釈をしてしまうとスネイプ先生は鼻で笑った。

「ではミスカワウチ、寮にお行きなさい。明日からあなたのために学校の先生達が特別に休暇を惜しんで個人授業をしてくださるのだから、ゆっくりするのは今日だけですよ」
「はい」




校長室を出てスネイプ先生の後をついていく。広いこの城内は迷路だ。それに階段が動くとはどういう事だ。

「先生は何の授業をしているんですか?」
「魔法薬学だ」
「魔法薬学って何ですか?どういう授業なんですか?」
「魔法薬やその材料についての知識を学び、魔法薬の調合を実践する。まぁお前のような生徒に理解できると期待はしておらんがな」
「失礼なんですね先生って」
「よく動く口をお持ちのようだなミスカワウチ。その口を閉じる事は出来ないようで」
「私普段はお喋りなんかじゃないんですよ。緊張してるからこうなってるんです。ところでスリザリンの寮ってまだなんですか?」
「お前のその口が閉じる事があったら早く着くだろう」


それもまた魔法なのか。
それとも皮肉か。

スリザリンの寮につくまで私は疑問をぶつけ続けた。

怪しい皮肉屋の先生だが面白い先生なようだ。先生の方こそよく動く口だ。



今まで校長やマクゴナガル先生と居ても1人だったような気がしたが、不思議と今は、ちゃんと2人で居る感じがする。







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