駅につくと両親を見つけた。
車から2つのキャリーバックを取り出し女性とはハグをして別れる。良い人だった。学校についたら手紙を書こう。


「ホグワーツの先生はもうお見えになってるよ」


父がそう言って歩き始め、母がそれについていく。私もキャリーバックをガラガラと引きながらついていく。一個は父に任せている。

2つのキャリーバッグがガラガラと音をたてる。旅行だったり帰省だったり人々の目的は様々だが、夏の駅は人でごった返していてすぐに両親とはぐれてしまいそうだ。
必死に両親の後ろをついていく。

周りからはいろんな音が聞こえる。人の話し声が大半だが、私達のようにキャリーバッグをひく音。どこからか流れる音楽。案内の音声。

しかし私には不思議と私と父がひくキャリーバッグのガラガラという音しか聞こえなかった。


「…あ、」


人ごみのなか、目立つ人物が二人。

白髪白髭の仙人かサンタクロースのような老人とひっつめ髪と四角い眼鏡の老婆…と言ったら失礼か。
とりあえず明らかに浮いている人物が二人居た。


「カオリ」
立ち止まり私の隣に立ったにつられ私も立ち止まる。父に背中を押される両親より一歩前に出ると老人と目があう。

「…あ、えっと」

異常に緊張してきて頭が真っ白になった。人見知りはしない方なのに。
何を言えばいいのかもわからず、口から出るのは「…えっと」や「その…」という言葉だけだった。しかも日本語で。

「…君がカオリ・カワウチかの?」
「え?あ、はい」

老人からの英語での問いに日本語返事になってしまって慌てて英語で言い直す。

「そう緊張する事はない。とって食うわけじゃない安心しなさい」
「とって食われるなんて思ってません…」

父は後ろでため息を吐いた。

「儂はアルバス・ダンブルドアじゃ。ホグワーツの校長をしておる。君の名前は知っておるが、自己紹介をお願いしていいかの?」
「…カオリカワウチです。えっと…13歳で、身長は155センチ。好きな食べ物は素麺で、嫌いな食べ物はとっても甘い物。運動は見るのもするのも苦手です。あ、でも足は速い方です。
えーっと、父と母と三人で日本に暮らしてました。昔はイギリスに住んでたみたいですが記憶には全くないです。でも英語は母国語並みに話せます。
あとは…」

ひとしきり自分の事について話した。

「いやいやもういい。ありがとう」

ダンブルドアは困ったように笑いながら(髭と髪であまり表情はわからないが)私のお喋りを止めた。

すると隣に居た老婆、いや、老婆というまでは老けていない婦人が口を開いた。


「面白いお嬢さんですね。私はミネルバ・マクゴナガルです。変身術の担当教授でグリフィンドールの寮監です」


面白いお嬢さん。
その発言について考える暇もなく「変身術」と「グリフィンドール」という単語に疑問符が浮かぶ。


「さて、そろそろホグワーツ特急が出ますよ。お急ぎなさい」
「君の両親とはゆっくり話したかったがの。またの機会としよう」

ダンブルドアの言葉に私の後ろにいた両親に目をやる。

母は「いってらっしゃい」と微笑んだ。

放任主義の母と過保護な父。
今回のホグワーツへの入学を決める時もそうだった。

母も嫌な顔で私の入学に乗り気ではなかったが「仕方ない。カオリが行きたいのなら」とOKを出した。一方父は最後まで「心配だ!」と言いなかなかOKを出さず、しぶしぶ許可をしてからも心配心配と口にする。

そんな父とは喧嘩も多かった。

ちょっとした事に口を出してくる父と口論になる事や、そのまま何日も口を聞かなかったり。
だけど産まれた時からずっと「嘘はつかない」「大切な人には素直でいる」と言われ育ってきたからそんな喧嘩はすぐ解決した。
両親は大切な人だ。素直に謝って自分の気持ちを言った。


「いってきますお母さん」
「気をつけてね。手紙書きなさいよ」

父に目を向ける。

「カオリ」

父は鞄から一つの細長い箱を取り出した。

「これを持っていきなさい」
「これ何?」
「大切にするんだぞ。壊さないように」

質問の答えになっていない。
とりあえず父から箱を受け取り、父がひいていたキャリーバッグも受け取る。


「いってらっしゃいカオリ」
「いってきますお父さん。大丈夫だよ安心して」

ニコリと微笑むと父も同じように笑った。




両親と分かれてからはさっきまで私がひいていたキャリーバッグをダンブルドアにひいてもらっている。なんだかよくない事をしている気分だ。


私がひいている父から受け取ったキャリーバッグはなんだかずっしりと重かった。







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