「チョコレートをあげよう」




ルーピン先生が辞任をした。
あの時ハリー達と話しているとハグリッドがそう伝えに来た。
ハリーがルーピン先生に会いに行き、私はハーマイオニーやロンと校庭をぶらぶらして別れた。


胸のわだかまりが取れない。
1人になりたかった。


しばらくするとルーピン先生が現れた。探したよ、なんて言いながら。




「普通のチョコレートですね」
「君は一度カエルチョコを食べるべきだよ。今まで嫌っていたのを後悔するさ」


普通のチョコレートをポケットに入れる。溶けてしまうかと心配したが、今は食べる気分ではない。


「さて、君に話がある」
「話?」

何だろうか。身構えているとルーピン先生は「聞き流してくれて構わないよ」と言う。


「最近久しぶりに昔の友人に会ったんだよ。すごく変わっていてね」

なぜそんな話をするんだろうか。疑問に思いながら話を聞く。
空を見ながらルーピン先生は話す。


「私は君に、昔ホグワーツで東洋人の友人が居たと言ったね?」
「…あー、言いました」
「君を見ていると、その友人はきっと全く変わって居ないんだろうなと思えるよ。
2人東洋人の友人は居てね。どちらもすごく良い人間だった。
1人はスリザリンだった。性格は正に狡猾でよく喧嘩をしたものだ。だけど気が合った。ユニークだったしね。
そして優しく情に厚く、正義を重んじていた。
もう1人はグリフィンドールだったよ。誰よりも冷静で優しくて、いつも支えられていた。
2人共大事な友人だった」



懐かしそうな、愛しそうな瞳。
ルーピン先生の優しい瞳がさらに優しくなる。


「きっと、今も変わって居ないんだろうな。君は2人によく似ているよ」
「私にですか?ルーピン先生の話を聞く限りあまり似ている気はしませんけど…。
まぁ、私ってすごく普通な性格ですし東洋人だし、似ちゃうんですかねぇ」

そう言うとルーピン先生は笑った。


「また会おう、カオリ」
「…?」


また、とはどういう意味か。
ルーピン先生が学校を去って私はルーピン先生と会う機会があるのだろうか。

どうしてルーピン先生はこんな目で私を見るのだろう。



気になったが、気にしないようにしてルーピン先生が差し出した手を握る。
暖かかった。






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