どういう事だったのだろうか。
初めて会った時からドラコはちょっとおかしかった。金持ちのボンボンだからワガママでちょっとおかしいのだろうと思っていたが、そうではないようだ。
何かを知っていて、それを私に伝えたいように見える。
私も知らない何かをドラコは知っている。なんとなく、それは知ってはいけない事だと思う。
だけれどきっと知らなければいけない事。
そんな事を考えながら毎日ぼんやりと過ごしていると試験の日になってしまった。
まだ暗い朝、散歩をする事にした。
校庭を歩いていると、黒い大きな犬に出会った。
「…でか」
あまりの大きさに目を疑ったが、ここは日本ではないし魔法学校だから私の常識なんて通じない。
犬はこちらに近づいてきた。
野良犬のようだし何より大きいので、怖いと思ったが犬が近いてくるにつれて優しい目をしていたのがわかった。
犬が前にきた所で私はしゃがんだ。
「わんちゃん、こんなとこで何してるの?」
相手は犬だし、日本語で話しかけた。久しぶりに放った日本語に自分で懐かしさを感じる。
母国語が懐かしく感じる程長い間イギリスに居るんだなぁと感じた。両親はどうしているのだろうか。
犬は首を傾げる。野良といっても聞き慣れない言葉は不思議なのか。
それでも、どうせ犬なんだから英語でも言葉は通じないだろうと日本語で話しかけ続ける。
手を伸ばすと犬は匂いを嗅いできた。
近所の人が飼っている犬も会う度に匂いを嗅いできたなと、さらに日本が懐かしくなってきた。
犬は優しそうな瞳を細め、どこか切なげな顔をした。
「大きいね。熊みたい」
熊のような犬の毛を撫でていると、犬のすぐ近くに見慣れた猫がいる事がわかった。
「あら、クルックシャンクス」
わりと不細工な大きな猫のクルックシャンクス。ハーマイオニーのペットだ。
この犬と仲が良いのだろうか。
「友達なの?」
犬とクルックシャンクスにそう問いかけてみてももちろん答えてはくれない。
きっと仲が良いのだろう。
「お散歩邪魔してごめんね。じゃあね」
そろそろ寮に戻ろう。
クルックシャンクスはまだ犬とお散歩をするらしく、1人で来た道を戻る。
朝だ。
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