寂しげな見覚えのある背中が見えた。
「ハリー」
振り返ったハリーは私をみるなり目を丸くし、微笑んだ。
「カオリ!ホグズミードには行かなかったの?」
「今年からホグワーツにきた私にはまだ早いって言われたの。ハリーは?」
ハリーは行かなかったの?
そう聞くと寂しそうな表情をしたハリーを見て、聞いた事を後悔した。
「サインを貰えなくて…僕両親が居ないからさ」
「え」
「親戚の家で育ったんだけどみんな意地悪で」
明るく見せようと笑いながらそう言うハリーだが、それは痛々しいだけだった。
反応に困っているとハリーは察したのか慌てて別の話題を出した。
「カオリってクィディッチは好きなの?」
「クィディッチ?」
聞き慣れない単語だが聞き覚えはある。ちょっと記憶を辿ってみるとすぐに思い出せた。
「あぁクィディッチね。うーん、見た事ないからあんまりよくわからないけど、そういう試合とかって興味ないんだよね」
ハリーはクィディッチのシーカーだと聞いた。シーカーが何かわからないけどとりあえずすごいらしい。
この前ハーマイオニーから自慢するようにハリーの箒の腕とクィディッチでの活躍を聞いた。
「箒も苦手なんだ。夏休みに数回乗っただけだし…。ハリーはすごく上手いってハーマイオニーから聞いたよ」
「君ってハーマイオニーと何話してるの?」
照れた様子のハリーは頭を掻きながらそう言う。
「おや、ホグズミードには行かなかったのかい?」
急に聞こえた低い声。そちらに目を向けるとルーピン先生が居た。
「やぁハリー。それとカオリ」
相変わらずの容姿のルーピン先生は立ち話をしていた私達に近づいてきた。
「こんにちはルーピン先生」
「こんにちはカオリ。ホグズミードには…あ、君は今年来たばかりだからまだ早いと言われていたんだったね」
「はい」
「じゃあ私がチョコレートをあげよう」
いつぞやかのようにローブのポケットから普通のチョコレートを出し私に差し出した。普通のチョコレートだったので私は受け取る。
「ありがとうございます」
ルーピン先生はどこか懐かしそうに私を見る。見つめられて緊張して汗がじわりと出てくる。
「…えっと」「あぁ、すまないね。私が在学中にも東洋…日本の友人が居てね。懐かしくて」
ついつい見つめてしまったよ。
寂しげに笑いながら言うルーピン先生は、先ほどのハリーのようにどこか痛々しかった。
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