「なんで君はポッターと仲良くしているんだよ」


ルーピン先生から言われた日から私は食事をとるようにした。
嫌味も聞こえないふり。黙々と食事をとる。
今日も変わらず夕食を食べていた。

「…久しぶりなのにその態度」

どかりと私の隣に腰を降ろすなり明らかに不機嫌なオーラを撒き散らしながら先ほどのセリフを言ったのは、なんだか既に懐かしいドラコ・マルフォイ。

「穢れた血の次はポッターか…」
「嫌いなの?」
「嫌いさ」
「どうして?」

久しぶりに誰かと会話をしながらの食事。温かいスープを一口すするとじんわりと体中が温まる。美味しい。

「ポッターは、」
「やっぱりいいや」
「は?」

ポッターは、とまで言ったドラコの言葉を遮った。

「誰かと食事をするのは久しぶりなの。ハーマイオニーもハリーも違う寮だしスリザリン生は私の事を嫌いみたいだし。
久しぶりに会話をしながらなの食事をして思ったんだけど、誰かの事を悪く言いながら食事をしてたんじゃ美味しい食事も不味くなるみたい」
「つまり?」
「どうせなら何か楽しい会話をしながら食事をしたいな。それが無理なら黙ってて欲しいな」


今日もスリザリンのテーブルは笑い声で溢れている。
私を含む誰かの悪口を言っていたり、自分達より身分が低い(貧乏やら穢れた血やら)生徒の事をバカにしていたり。

そんな会話をしながらの食事が楽しいのだろうか。

「ドラコは家では親とどんな会話をするの?」

そう問えばドラコは少々驚いた顔をみせた。そういえばスリザリン生は私が嫌いだったな。もしドラコも私の事が嫌いなら話しかけてほしくはないだろう。
しかし今回はドラコから話しかけてきたのだし。

「…僕は」

考え込むようにうーんと唸る。
思い出せないのかしばらくしてドラコは「君は?」と私に聞いた。

「私は学校での話とかかな。どんな授業をしたとか友達がこんな事をしたとか。普通だよ」
「ふーん。まぁ僕ん家もそんな感じだよ。学校での事とか」
「ドラコは家でもあいつはバカだとか低俗だとか言うの?」
「…まぁ、言わない事もないな」

その返事に少しだけ驚いた。そうだろうとは思っていたが。

私も人を悪く思う。
いつだったかその気持ちをそのまま親に伝えると「カオリが知らないだけでその子の良い面は沢山あるのよ」と叱咤された。
それからは極力嫌いな人の良い面を探すようにしたりもしたが、やはり嫌いなもんは嫌いなんで今まで通り素直に生きる事にした。


「へぇ。親は怒らない?」
「怒らないさ。僕に怒る事は滅多にないね。そりゃ僕が両親に恥をかけるような事や成績が劣っていたら怒るけどさ。」


ふふんと笑うドラコはきっと両親が好きなんだろう。


「私の家なんか私が悪い事をしたらすぐ怒られるよ。むしろ成績なんかじゃ怒られないよ」
「成績で怒られない?変わってるな」
「ドラコの家もね」


大皿からチキンをとり皿にのせる。初めてドラコと話した日はこのチキンでパーキンソンと大喧嘩をしてしまったな。


「ドラコのお母さんって綺麗そうだね」
「まぁな」


当たり前のように頷くドラコに思わず吹き出しそうになるがこらえた。マザコンかこいつは。


「…ていうか君は、」


こちらをチラチラ見ながら何かを言うか言わないか考えているらしいドラコ。しばらくして「あーいいや」と言ったが私は気になって仕方がない。


「なに」
「なにも」
「嘘!」
「別に」
「気になるじゃん」
「じゃあ気にしなきゃいいね」


ツンとそっぽを向きながらどことなく不機嫌そうな雰囲気。そんなドラコにこちらまで不機嫌になりそうだ。


「じゃあ気にしないし!とりあえずドラコが両親大好きなのはわかったから」
「そうかいそれは良かった。君の両親はどうなんだ?」
「私の両親はドラコが嫌いなマグルよ」

チキンを頬張る。やはり、美味しい。

「そうじゃなくて。…あー、もういい」


変な奴。さっきから1人でグズグズしている。


「ていうか、君って気持ち悪いから違う呼び方をして」
「そうだな。僕が名前を呼ぶのを遠慮してたなんて馬鹿な話だ」
「…」

次は1人で笑い出した。変わった奴だなドラコ・マルフォイ。いろんな意味で親の顔が見てみたくなった。
きっと綺麗で格好いいのだろう。

滅多に叱らないと言っていたけど、噂ではドラコの家は凄いらしい。ドラコ本人の性格はあまりよろしくないが、躾はきちんとなっているし、ドラコが両親大好きな様子を見る限りきっと良い両親なんだろうな。



だけど私の中のドラコの親のイメージはしばらくして消える事になる。







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