スリザリン生は陰湿だ。
同じ寮に友人のいない私は一人で食事をとっている。
一人で食事をとる私に聞こえるように穢れた血の話をしたり、私の授業での失敗で盛り上がり笑う。もちろんスリザリン生が。
最初こそ我慢できたが、そんな話題の中では美味しい食事も不味くなるのでいつの間にか食堂から足は遠のいていた。
お腹は空くけれど、我慢できる。
ルーピン先生は知っていたのだ。
じゃあ、スネイプ先生も知っているのだろうか。
「あ、ごめん」
チョコレートをかじると口いっぱいに広がる甘さ。ひたすらに甘い。
甘い物はあまり好きではないが、チョコレートなら大丈夫。むしろ好きだ。
プリンやケーキ等のしつこい複雑な甘さは好きではないが。
そんな事を考えながら歩いていると誰かとぶつかった。
「ハーマイオニーの」
「ハーマイオニーの」
目を合わせた私と彼の言葉はかぶった。それは見覚えのある丸い眼鏡の人物。
「あー、先にどうぞ」
丸眼鏡の彼は私に先に話して良いと言った。「ありがとう。えっと…あなたは、ハーマイオニーの友達の…えっと」
「ハリー・ポッターだよ」
「あ、ハリーっていうの?私はカオリ・カワウチ」
「知ってる」
そう言いながら彼は微笑んだ。よろしくハリーって呼んでねなんて言いながら。
私が思っている以上に彼は良い人かもしれない。
「ハーマイオニーはいつも君の事を話してるよ」
「え?私の事を?」
ハリーは頷いた。
聞くと、私とどんな話をしたかとか、私が授業でこんな失敗をしたとか。私から聞いた日本の話をハリー達に話す事もあるらしい。
意外だ。
「ハーマイオニーは昔から僕達とずっと一緒だし、言っちゃ悪いけどあの性格だからか女の子の友達は少ないんだ。だからカオリと仲良くなれたのが嬉しいみたいだよ」
あの性格だからとハリーは言ったが、確かにハーマイオニーは気が強い。というか完璧主義で生真面目だから多少付き合いにくい所があるかもしれない。
だからこんな私と仲良くしてくれているのは不思議だった。
私は特別真面目ではなく成績は良くないし、ずぼらだ。
正反対だからこそ仲良くできているのかもしれない。ハーマイオニーとは付き合いにくいと思った事はないし、むしろ一緒にいて楽しいし落ち着く。
初めて話した日からそう感じていて、ハーマイオニーが特別だと言ってくれた時にはもう自分もそう思っていた。
「なんか親みたいだねハリーって」
「そう?」
「あ、でも、いいの?」
キョロキョロと周りを見ながらハリーにたずねると「なにが?」と返された。
「ウィーズリーと…私嫌われてるみたいだし」
「あぁ。ロンはいいよ。スリザリンが嫌いなだけだし。気にしないで。
ていうかウィーズリーなんて呼んでるの?ウィーズリーはいっぱいいるからロンって呼んであげなよ」
「いやそれは無理だよ」
そう言った私の焦る顔をみて可笑しそうに笑うハリーをみて私は、ハリーは意外に良い人ではないかもしれないと思った。
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