「いってきます」

両親にそう言って9と3/4番線のホームに向かう。



「かおり!」

人でごった返すホームの中を歩いていると名を呼ばれる。聞き覚えのある声だ。

「あ、ドラコ」
「久しぶりだな」

私の名を呼んだのはドラコだったようだ。

夏休みはずっと両親や誰かと居たので久しぶりの1人に心細く感じていた。良かったと安心するとドラコのすぐ近くに大人が2人立っているのに気づく。


「君がミス河内かな?」
「え、あ、はい」

ドラコによく似た男性がそう言う。ドラコの父なんだろうとすぐにわかった。

「休暇中ドラコから君の話はよく聞いていたよ」
「え」

マグル生まれの穢れた血の東洋の女!だとかひどい事を言われなかっただろうか。ドラコなら言いそうだ。

私の心中を察したのかドラコの父はにこやかに笑った。若い頃はモテただろうな。

「東洋に私の知り合いが居てね。学生時代の後輩なんだが彼も魔法の腕は優れていた。君も魔法の腕は良いみたいじゃないか。東洋には優れた魔法遣いが多いようだ」
「魔法の腕…」


私は優れた魔法がつかえるわけではない。
この前の試験は意外にもよくできた。それはドラコに教えてもらったからだろう。教えた本人は教え子の試験結果が良かった事にとても満足していた。

しかしそんなに良かったわけではない。普通よりちょっと上。


「…ありがとうございます」

ドラコの父はなんだか言葉では表せないような雰囲気の人だ。笑顔は紳士的で素敵だが、なんだか違う。よくこんな人と結婚したなぁと隣の奥さんをチラ見する。文句なしの美人だった。


「かおり、そろそろ電車に乗ろう」
「あ、うん」

ドラコが両親に丁寧な挨拶をして私に「行こう」と催促する。

私が思っていた以上にマルフォイ家は金持ちなようだ。





「かおりは夏休みなにしてたんだ?」
「普通だよ。お父さんと話したり友達と遊んだり。日本はイギリスよりも蒸し暑いから大変だった」
「僕んちに遊びにくれば良かったのに」
「いやいやいろんな意味で無理だよ」


なんでだよ、と向かいのイスに座ってるくせに身を乗り出してきたドラコを適当に言いくるめた。

「まぁ日本とイギリスは遠いしね。私トイレに行ってくる」

そう言ってドラコを残してトイレに向かった。
通路は生徒でごった返しておりトイレまでも一苦労。久しぶりの再会に皆喜んでいるようだ。

無事トイレにたどり着き、そしてコンパートメントまで帰ろうとトイレを出た時「あ」という声がした。


声の方を向くと私をみる目が4つ。


「…いきなり声出してごめんなさい。あなたロンの友達のかおりよね?」
「え、うん」

知らない子だった。赤毛の女の子とダークブロンドの長い髪の女の子。


「休暇中にロンからちょっと話を聞かされたの。東洋人の友達ができたって」
「ロンが?」

ならこの赤毛の子はロンの友人なのだろうか。こんな美人と友達だなんて、ロンってばやるな。

「あ、私ロンの妹なの」
「え、あ、妹だったの」

赤毛だったり顔のそばかすが無かったらロンの妹だなんてわからない。似ていない。なんて彼女の顔をみて思った。

いつだったか誰かが「ウィーズリーはたくさん居る」と言っていたしロンは兄弟が多いのかもしれない。


「パパがうちに来てほしいって言ってたわ。まぁ詳しくはロンが話すだろうけど」

そう言って「じゃあね」と、かっこよく去っていく彼女の名前を聞くのを忘れていた。






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