三和櫂




いつもの通学路。
今日はカードキャピタルに寄っていくのかとか、新弾のあのカードのスキルがどうのとか、そんないつもと変わらない会話を交わしながら、櫂と三和は桜並木を歩いていた。
「コストは重いが、これは……」
「……?」
そんな話の途中で、ふと櫂が三和の顔を見つめたまま、視線を止める。
「櫂?」
不自然に途切れた櫂の言葉に、三和は不思議そうに首を傾げた。
櫂がじっと自分のことを見つめるものだから、三和はその視線の強さに少し居たたまれなさを感じる。
「なに?俺の顔になんかついてる?」
そんな三和の言葉にも、櫂は何も答えない。しかしその代わりに、ふいに右手を持ち上げたかと思うと、その手を三和の方へと伸ばした。
「っ!」
櫂の指が三和の柔らかな金髪に触れた瞬間、三和はびくりと、大袈裟に体を揺らした。
そして、そんな三和の反応に驚いた櫂もまた、ぴたりとその手を止める。
「な、なんだ……」
櫂は訝しげに三和の顔を見つめ、眉を顰めた。
なぜ三和にそこまで過剰に反応を示されなければならないのかわからなくて、狼狽する。
「むしろそれ、こっちが聞きたいんだけど……。いきなりどうしたんだ?」
しかし三和はそう、少し動揺しながら櫂に問い返すのだった。
「……」
すると櫂は、自分の問いを問いで返されたことが不服なのか、途端に不機嫌そうな顔をする。
「だってさ。いきなりお前に触られたら、そりゃびっくりするだろ……」
「……なんだ、それは」
困ったように頬を掻く三和に、櫂はますます不満を募らせ、低く呟いた。
「いや、その……なんつーか、ドキドキしたっていうか……」
「な……っ!?」
そんな櫂を余所に、三和は少し頬を赤らめて、そう続けるのだった。
そうすれば、三和の顔を見た櫂もまた、言葉を詰まらせる。
「ハハッ! いや、うん! やっぱなんでもねぇ!」
「……」
しかし三和は、何か邪念でも振り払うかのようにそう言って笑い飛ばすと、櫂の前で大きく手を振ってみせた。
わざとらしい空笑いがなんとなく癪に障って、櫂は小さく唇を噛むと眉間に皺を寄せた。
「……はやく行くぞ」
「あっ! ちょ、ちょっと待てよ! 櫂!」
そしてそのまま、三和を置いて歩き出す。
三和は一瞬遅れたものの、慌てて地を蹴ると早歩きに前を行く櫂を追った。そして、再び隣に並んでその横顔を見つめる。
「なぁ、それで結局なんだったんだ?」
「……何の話だ」
「いや、なんでいきなり、髪なんて触ってきたんだろって」
「……」
「櫂?」
「……おまえが」
「ん?」
「……おまえが、そんな顔するから……」

(ただ花びらを取ろうとしただけなんて、もう言えないだろ……)


「馬鹿三和」





柔らかな風が二人の間を撫でる、優しく、甘酸っぱい季節。

触れられたのは、きっと――







おわり
(三和→←櫂/恋人未満)














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