sailor stars
思いついたことを好きなだけ。
 


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2016/04/07 23:48

愛を囁く時。それはきっと暖かい気持ちで心が満たされ。それだけでは足りないとばかりに、溢れ続ける想いが身体中をぽかぽかと熱する。
そんな優しくて心地の良いものだと。そうあるものだと。漠然としたイメージがあった。でも実際は。

「愛してる」
言うつもりはなかった言葉が零れてしまった。
ついに、と言うべきか、とうとう、と言うべきか。
ずっと蓋をして押さえ込んできた。膨らまないように。溢れないように。限界なんてとっくに過ぎてたけれど、無理矢理押し込めて閉じ込めて。彼女を困らせないように。
だけれど、ぎゅうぎゅうに抑えつけたそれはいつか零れる時をまっていたのだろう。ふとした拍子に簡単に滑り出てしまった。
声が掠れた。
ヒリヒリと喉が焼け付く。
しまった、とも思った。しかしそれ以上に妙に安堵を覚えた。ずっと強張っていたものがゆるゆるとほぐれていくようだった。

彼女は予想通り眉間に皺を寄せた。
「まぁたそうやって人の事からかって!」
わざとらしく腰に手をやり、いかにも怒ってますといった風だ。
「だいたいねーあたしにはまもちゃんっていう素敵な彼が…」
わかってる。
わかってるさ、そんな事。

鈍感な彼女の態度に益々ほっとしたものの。
ここまでくると逆に腹が立つ。こっちはまるでナイフを突きつけられたような気分だったのだ。少しくらい気付いてくれてもいいのに。

「なあ、おだんご」
「なによ?」
「本気、なんだけど」

青い眼が見開かれた。
驚いた顔はそのまま、真っ直ぐに彼の顔を見る彼女はそのまま思考回路が止まってしまったようだ。
微動だにしない彼女を見て、星野は自分がやたらと喉が渇いている事に気付いた。カラカラに渇いて、今にも咽せそうだ。それからズキズキと痛む。
やがて彼女は、どうしよう、と言わんばかりに眉根を下げ、口をへの字に歪めた。鼻の頭はうっすらと赤味を増して。いつもより潤んだ瞳は複雑そうに星野に視線を送り続ける。それは少しだけ、彼を責めているようにも思えた。

えぐられた。
己のエゴを、甘えを。
心臓をぎゅうと握られたようだった。
「言わない方が良かったか…?」
これは彼女じゃなく自分に問うべきものかもしれない。それでもやっぱり聞きたい。聞いてしまいたい。

彼女は何も答えなかった。
ただ、困ったような笑顔を浮かべた。

彼はそれを認めるとニッと歯を見せながら
「悪い、冗談だよ!」
と彼女の結わえたお団子をぽんぽんと弾ませた。
金色の髪は彼の手の動きに合わせてふるりと揺れる。
「もう!星野の馬鹿!」

彼女の口調は怒っているようだったが、そうじゃないことは一目瞭然だった。

Fin.


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