on your mark22 | ナノ





on your mark22

「そろそろ、いいな」
 男は独白し、すでに勃起しているペニスへコンドームを被せる。開脚の状態で拘束されている直広の足の間へひざをつき、彼はアナルから低周波装置を引っ張り出した。彼の手が汗で光る直広の腹に触れる。
「っああ、あ」
 低周波装置でほぐされた直広のアナルへ、硬くたち上がった男のペニスが挿入された。男は直広の中を味わうようにゆっくりと腰を打ちつける。彼は気持ちよさそうに息を吐いたが、直広にとっては拷問でしかない。
「ひ、あ、アア、い、いかせ、ア、ぅ」
 男は直広の懇願を聞き入れず、直広の浮き上がった腰を両手でつかみ、激しくペニスで突き始めた。勃起できない直広はペニスの痛みが大きく、泣き叫んだ。彼は一度、射精すると、直広のアナルへまたローター型低周波装置を埋め込んだ。彼の性欲が回復するまで、直広は体内からの電気責めに耐えなければならない。
 三度目の射精の後、男はようやく満足した笑みを浮かべた。直広はぐったりとしており、目を閉じていたが、意識はあった。もう口を動かすこともできず、彼が、「いきたいって言ってたな」と、貞操帯を外しても、反応を返すことすらできない。
 シリンダーに押し込められていた直広のペニスは赤くなっていた。
「すごい先走り。泡になってる」
 男が低周波装置のパッドを取りつける前に、直広のペニスをタオルで拭った。それだけで直広は射精した。突き抜けるような痛みの直後に、甘い痺れがやって来る。彼は手で何度かしごいた。そのたびに射精して、うめき声を漏らす。
 連続して三度、絶頂を迎えた後、男の手が低周波装置のパッドへ伸びた。彼は直広のペニスへパッドを付ける。
「電気で責められるの、好きだろう?」
 直広はうっすら目を開けて、首を縦に振った。
「ちゃんと言葉で言って」
 言葉を発しようと、息を吸った。だが、出てくるは、「あー、うー」といった間延びした音だけだった。
「気持ちいい?」
 直広は瞳に涙を浮かべた。頷かなければ、と思うのに、男の手が伸びている先を見て、しゃっくりを上げた。
「泣くほどいいんだ? 好きなだけ、いけよ」
 男は素早く三つの装置の電源を入れた。乳首とアナルとペニスへ、同時に刺激が与えられる。想像を絶する電気の刺激に、直広は叫びながら、何度も絶頂を迎えた。
 熱が下がるはずもなく、最後のほうは意識が混濁し、なぜか小学校の頃の思い出が去来した。

 小学校二年の時だ。授業参観に来られないと言っていた母親が、来てくれた。最後の十分ほどだが、とても嬉しかった。彼女が学校行事に参加したのは、それが最初で最後だった。
 帰り道に、喫茶店でクリームソーダを食べさせてくれた。直広はその時、母親から弟ができたと教えてもらった。
「なお、お兄ちゃんになるからね」
「うん。僕、弟と遊べるの?」
「赤ちゃんの間は無理だけど、大きくなったら遊べるわ。この子のこと、守ってあげてね」
「うん」
 目が熱い。健史のことを守ると約束したのに、守ってやることができなかった。
「何で生ませたんだよ!」
 襖を開けた健史が、泣いている史人を迷惑そうに見た。
「父親も母親もいない子どもなんて、不幸なだけだ」
「俺が父親になる」
「馬鹿じゃねぇの? どうせ繰り返すだけだ。そいつもいつか、なおに言うぜ? こんな貧乏な家は嫌だ、本当のお父さんとお母さんと一緒に、ファミレス行きたい、何でうちは普通じゃないの? ってさ」
 直広は史人のおむつを替える。
「たけ、俺は今、幸せだよ。与えられないものは多いかもしれないけど、幸せは一つじゃない」
「そういうの、自己満足って言うんだよ」
 健史は怒って、そのまま家を出て行った。直広はまだ生まれて一ヶ月も経っていない小さな史人を胸に抱く。泣きやまないのは、健史と同じ意見だからか、と考え、そう考えた自分に苦笑した。

21 23

main
top


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -