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on your mark13

 ナイフの先がジーンズを裂いた。ジーンズも下着も先ほどの失禁で濡れていたが、今はそのことを気にかける余裕はない。直広の性器を確かめるように、ナイフの刃が下着の上から軽く押す。目を閉じようとしたら、カメラを見るように命令された。
 父親を知らずに育った直広は、学校や雑誌からしか性的な知識を得ていない。高校の時の同級生が、一年の夏休み明けにそういった話を聞かせてくれた。自分もいつか、好きな人と自然にそうなると思った。だが、十代の頃は働くだけで精いっぱいで、二十六歳の時に初めてできた彼女は健史と寝た。
 早いうちから異性と付き合い、性の目覚めも早かった健史は、直広のことを馬鹿にしていた。男は皆そうだ、と言われても、性欲より睡眠欲のほうが強い気がした。彼女との一件の後、健史は一緒に遊んでいる友達の一人だといって、可愛らしい子を家へ連れてきた。彼は彼女のことを好きにしていいと言ったが、直広は彼女を駅まで送り、すぐに睡眠を取った。
 性欲がまったくないわけではない。ただ、眠気のほうが強く、布団を見たらとにかく体を横にしたいと思った。
 新崎の持ったナイフの刃が、直広の下着を引き裂く。小さく縮こまっている性器を見て、彼は冷笑した。刃先をわざとらしく立てて、首筋と同じように薄く引いていく。ぶるぶると震える足を見て、男達が笑った。
「包茎かと思ったが、ちゃんとむけてるじゃないか」
 新崎はナイフを置き、直広のペニスをつかむ。ボトルに入っている潤滑ゼリーを左手に垂らし、彼は乳首に塗った。少し傷ついていた乳首にぴりぴりとした痛みが走る。彼はボトルから潤滑ゼリーを継ぎ足し、直広のペニスへ触れる。冷たさに体を動かそうとすると、やんわりと睾丸をもまれた。
「っや……ぅ」
 最後に自慰行為にふけったのは、いつだっただろう。直広は新崎の巧みな指先に導かれ、ペニスを勃起させる。ゼリーの絡んだ指先は、直広のペニスを這い、あらわになっている亀頭の部分を擦っていく。
 疲労している体に甘い刺激が加えられ、直広はそのまま射精して意識を飛ばしてしまいたかった。手足は動かせない状態だったが、腰の部分は磔台から浮かせることができ、新崎の指先がペニスから睾丸、裏筋を通り、亀頭へいたった時、無意識のうちに腰を前へと突き出した。
「もういきそうなのか」
 新崎は手を離す。直広は勃起しているペニスへ視線をやり、すぐに目を閉じた。
「ンっ、い」
 男の一人が乳首をつまみ、直広にカメラを見るように言う。直広はくちびるを噛み締めて、命令に従った。
「いく時はいくって言え」
 潤滑ゼリーで指を濡らした新崎が、直広のペニスを再びしごき始める。噛み締めていたくちびるが緩み、直広は中から熱くなる体を持て余した。疲労が心地よいと思えてくる。腰を浮かせ、体を動かしながら、直広は熱を吐き出したいと思った。喉から自分のものとは思えない音が漏れていく。
「っあ、ン、ぃ、あ、あぁ」
 ペニスの先がじんわりと熱くなる。絶頂が近い。新崎が少し緩急をつけながら、指先を動かしていく。
「ちゃんと言え」
 耳元でささやかれて、直広は目尻から涙を流し、「いく」と言った。
「聞こえない」
 新崎はペニスから手を離す。すでに正常な思考を失っていた直広は、射精したくて仕方なかった。射精すれば体内の熱が出て、ぐっすり眠れるだろう。無論、このあと彼らが寝かせてくれるわけもないが、射精できない中途半端な状態は直広のことを苦しめる。
「いく」
 先ほどよりは大きな声で言った。新崎は下品に笑うと、「じゃあ、いけ」と返す。
「さっきやってただろ。自分で腰、振っていけ」
 ペニスへの直接刺激がなければ、射精は難しい。直広は言われた言葉に唖然とした。何もないところでただ腰を振るなんて滑稽すぎる。乱れていた髪が汗で額に張りつき、新崎の指先がその前髪をサイドへ寄せた。彼は意味深に指先で頬をなでていく。彼の左手が直広のペニスを軽くつかんだ。直広が思わず腰を揺らすと、すぐに離れていく。

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