falling down 番外編10 | ナノ





falling down番外編10

 トミーはトビアスが夜中に寄宿舎を抜け出していることに気づいていた。レアンドロスへ会いに行っていると思っていた。だから、あの夜もそう判断した。寄宿舎を抜け出して、彼の元へ行こうとするトビアスを脅すつもりだった。ふらふらと礼拝堂の前まで歩き、鍵を取り出すトビアスを見て、トミーはレアンドロスとここで落ち合うのだと思い込んだ。
 中へ消えたトビアスをすぐには追わず、レアンドロスが現れるのを待つ。待っている間、もし、本当にレアンドロスが来たら、トビアスのことを脅して、自分のものになれと言うつもりだった。
 時間にすれば十分ほどのことだったと思う。トミーはトビアスに出会った時のことを思い出していた。最初は午後の授業でテニスを選択した時だ。サーブの練習をしながら、ふと校舎を見上げると、窓際で水彩画の授業を受けているトビアスが見えた。
 ブラウンの癖毛が風に吹かれ、トビアスの白い手が髪を押さえるようにして動いた。トビアスは校内でいちばんきれいだった。彼の悪い噂を聞いていたが、それらはすべて嫉妬だと言えるほど、彼は容姿だけでなく雰囲気も端然としていた。
 初めて話しかけたのは、廊下だった。トビアスと同じ数学の授業で、写しきれなかった部分を写したいから、ノートを貸して欲しいと頼んだ。彼はためらうことなく、貸してくれた。
 気づいてくれないトビアスが悪い。トミーは礼拝堂の扉を開けた。レアンドロスは来ない。来たとしても、自分がいれば、入って来れないと思った。靴音はあまり響かなかったが、気配を察してトビアスがこちらを見た。
 薄暗い中、「トミー」というか細い声の後、トビアスの瞳がかげるのを確認した。彼はレアンドロスだと思ったのだろう。急に体が冷えるような感覚を覚えた。彼に対して、怒りがわいてくる。トミーは常夜灯を消した。
「トミー?」
 この期に及んでもまだ、自分を弟程度にしか思っていない無防備な声だった。どうして男として認識してくれないのかと苛立つ。床へ押さえつけると、トビアスが暴れる。だが、彼の力など非力なものだった。
「ぃ、や、いやだ、トミー、やめて、やだっ」
 毛布の下へ手を伸ばすと、トビアスのアナルはすでに濡れていた。トミーはまだ誰ともしたことがない。初めてはトビアスとしたかった。知識だけで、彼はレアンドロスのために準備してきたのだと勘違いした。もう何度もしているのだろう。それなのに、自分とするのは嫌だと拒否されて、彼の口を押さえる。衝動に任せて、まだ暴れる彼の頬を殴ると、ようやく抵抗をやめた。
 暗闇に目が慣れてきたものの、トビアスの表情は見えない。トミーは彼の太股をなで、硬くなっている自分自身のペニスをしごいた。トビアスが四つ這いになり、逃げようとしたため、足を引っ張り、うつ伏せにして押さえた。子どものように泣く彼の口をふさぎ、アナルへペニスを突き立てる。
 トビアスの体がのけぞった。痛そうな声も漏らしたが、彼のアナルはすんなりとトミーを受け入れた。そのまま勢いだけで腰を動かすと、トビアスは悲痛な声を出しながら、体を揺らす。中は信じられないほど、気持ちよかった。一度、中で射精した後、今度は仰向けにして犯す。
 しばらくの間、トビアスの中で絶頂の余韻に浸っていた。レアンドロスが来たら、自分のものだと言ってやろうと思った。トビアスだって、こんなにも気持ちよかったのだから、自分に満足してくれているはずだ。トミーは月明かりに照らされたトビアスを見下ろした。
 トビアスはうつろに空を見ているだけだ。自分が望んだ相手ではないから、見てくれない。トミーはそう思い、うつむく。トビアスの手が伸びてきたが、トミーはそれを払った。
「ご……ごめ」
 口をふさいでいた手を離すと、トビアスの謝罪が聞こえた。トミーにとって、それは拒絶の言葉だ。衣服を整え、トミーは礼拝堂から出た。泣きながら走って、寄宿舎の窓から自分の部屋へ入る。同室の生徒達は眠っていた。トイレまで駆けて、濡れているペニスを拭こうとした時、ようやく血が付着していることに気づいた。

番外編9 番外編11

falling down top

main
top


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -