falling down59 | ナノ





falling down59

「結婚するまで待つつもりだった」
 レアンドロスの言葉に、トビアスは涙を拭う。すぐに新しい涙があふれた。イレラント国では同性婚が認められている。だが、二十歳以上でなければ正式な届出はできない。結婚するまで待つということは、あと二年は待つと言ったことと同じ意味だ。
「俺が待てない」
 泣きながら笑って言うと、レアンドロスが体をぎゅっと抱き締める。
「愛してる」
 レアンドロスはささやくように告白し、抱き締めてくれた腕を緩める。耳元で音がした。彼がコンドームを指にはめる。潤滑ジェルを手にした時、トビアスは四つ這いになろうとした。表情を隠せると思った。
「ビー、仰向けのままでいて」
「でも、こうしたほうがやりやすいよ?」
 トビアスは四つ這いになり、顔を枕に埋め、腰を突き出す格好を取った。レアンドロスが両手で両足首を引っ張る。
「わっ」
 トビアスがうつ伏せになった後、彼は仰向けにさせた。身長差からいって、トビアスが彼の力に敵うはずがない。
「顔が見えないのは嫌だ」
 レアンドロスは、彼の枕をトビアスの腰の下へ入れて、足を開かせる。格好じたいは恥ずかしいと思わない。だが、彼の表情が見えることに緊張した。ジェルで濡れた彼の指が、アナルを探る。指一本だけでも、中へ入れるまでは苦しい。トビアスはなるべく平気な顔をした。指が少しずつ入ってくるのが分かる。痛みはなかったが、徐々に汗が吹き出した。
「ビー」
 空を見ていた視線を声のほうへ向ける。レアンドロスから軽いキスを受けた。手足を縛るものはなく、罵る声もない。ただ愛する人が、痛みや不快感を与えないようにと、必死にこちらを見ながら、指を進めた。
「手」
 トビアスはレアンドロスの左手へ触れた。彼は不安に思ったのか、アナルの中の指を止め、何度も頬や首筋、胸へとキスを落とす。
「っア、ああ」
 レアンドロスが額へキスをしようと、体を動かした時に、アナルの中の指先が進んだ。ちょうど前立腺へ当たり、声が漏れる。彼は驚き、指を抜いた。
「ごめん、大丈夫か?」
 トビアスは小さく頷き、「今の……」と小さく言う。レアンドロスは痛みで声を出したと勘違いしていたようで、頬を染めた。
「分かった」
 レアンドロスはもう一度、慎重に指をアナルへと入れる。前立腺まで指先が触れると、トビアスはぎゅっと拳を握り、声を出した。ペニスへ熱が集中していく。アナルの縁に一瞬、痛みがあった。だが、一瞬だけで、トビアスは指が増えたのだと理解する。準備は自分で行うものだったため、不思議な気がした。
 トビアスは無意識に腰を揺らす。指の動きに合わせてしまう自分を浅ましく思った。怖くて、レアンドロスを見ることができない。
「トビアス」
 指にはめていたコンドームを外したレアンドロスが、くちびるへキスをする。何度も愛しているとささやかれた。彼のペニスがトビアスのものへと当たる。言葉はなく、視線を交わした。彼は新しいコンドームを身につけ、トビアスのアナルへと入ってくる。
 怖くはない。トビアスが両手で自分のペニスを握ると、レアンドロスは体の動きを止めた。まだ挿入途中だったため、トビアスは自分が何か失敗したのかと思い、いっそう強くペニスを握った。
「何してるんだ?」
 優しい聞き方だった。レアンドロスの手が、自分の手へと重なる。
「こんなに強く握ったら、痛いだろう? ビー、手は俺の背中へ回すか、肩、つかんで」
 手をどうすればいいのか分かり、トビアスはペニスから手を離す。強くつかんだペニスは赤くなり、なえていた。
「ビー?」
 心配するレアンドロスは、まだトビアスの中にいる。トビアスは鼓動が速くなっていくのを感じた。
「……大丈夫?」
 トビアスからの問いかけに、彼は頷く。
「ほんとに? 緩くない?」
 レアンドロスは怪訝そうな様子で、トビアスのアナルからペニスを抜こうとした。トビアスは子どものように、「嫌だ!」と叫ぶ。

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