spleen75 | ナノ





spleen75

 手を重ねた志音は何も言わなかった。彼のくちびるが頬へ触れた後、彼は夕飯を買ってきたから、とスタミナ弁当を取り出した。明史には消化によさそうな野菜スープとおにぎりを選んだようだ。
 食事の後、志音の足の間で座り、明史はそっと彼の胸に体をあずけた。彼の左足に置いていた右手が握られる。明史は深い安心感の中で目を閉じた。今朝は触れられることに恐怖を覚えたが、今はもう怖くなかった。
「志音……」
 目を閉じたまま、明史は、「俺のこと、まだ好き?」と聞いた。肩に回っている志音の右手が、背中をなでてくれる。
「好きだ」
 明史は新車と中古車のどちらを買うか、聞いてみようと思った。だが、言葉にすることはできなかった。志音が許してくれる限りは、そばで甘えていたかった。今は彼の手も視線も声も、すべて自分のものにできる。幸せな時間が長続きしないことは、明史自身、よく分かっていた。

 終業式は午前中で終わる。明史は志音の部屋のパネルでログインして、メールを確認した。先に家族用のメールを見て、兄からの近況報告を読む。学園での騒動が、両親の口から兄へ伝わることはない。明史はいつもと変わらないメールの内容に安堵した。
 学園から与えられているメールアドレスでログインすると、恐ろしい数の未読メッセージが入ってきていた。フォルダ分けしている委員会のほうは数通で、ほとんどがアドレス帳に登録されていないところからのメールだ。タイトルを見る限り、開かないほうがいい。
 明史は自分のケータイが手元にない理由に思い至り、くちびるを噛み締めた。水川はこのメール内容をケータイから確認したに違いない。一通だけ確認して、あとは削除しようと思った。
 視界がぼやけていく。明史の手は次のメール、また次のメールと開いていき、耐えられなくなって、全削除を実行した。学園を卒業することは目標であるものの、このままここにいることができるのかは分からない。
 明史は志音の部屋から出て、職員室へ向かった。公式の行事は体育館で行われるが、全校生徒が一斉に入ることができないため、式じたいはパネルで流される。皆、教室で見ているはずだ。
 カードを忘れてきたことに気づき、扉の前から去ろうとすると、中から教師が出てくる。
「あ、おまえは」
 知らない教師がいきなり腕をつかんだ。全身を駆け抜けた冷たい感覚に、明史は動けなくなる。
「こんなところで何してる?」
 教師につかまれた腕や高圧的な物言いに、震えが生じる。早く謝らないと、合意だと言わないといけない。そう思うのに、言葉が出ず、明史は呼吸を速めるだけだった。
「どうしたんですか?」
 里塚の声がしたが、明史の耳には入らない。明史は必死に言い募った。
「ごめんなさい、ゆるしてください、もう、やだ、ごういだっていうから、もうやめて、もういたいの、いやだ」
 明史は左手で頭を押さえながら、つぶやく。
「あぁ? 大友、何、言ってんだ?」
 まだ右腕をつかんでいる教師が声を上げた。明史は悲鳴を漏らしながら、ひたすら黒岩に媚びる。そして、許しを請い、泣き続けた。三人の男に強姦された日、もう受け入れられないと訴える体も心も無視して、明史は黒岩に抱かれた。
 黒岩は明史にまたがるように指示をして、腰をつかむと、荒々しく揺さぶった。明史はすでに何度も射精させられた後で、黒岩との性交は拷問に等しかった。吐き出すものがないペニスが震えるたび、黒岩は面白がって、明史のペニスを握った。壊れると訴えても、泣き叫んでも、彼は明史が気を失うまで犯し続けた。

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