spleen73 | ナノ





spleen73

 明史が目を覚ましたのは、保健室へ運ばれた翌日だった。志音のベッドで眠っていた明史は、ソファで眠っている彼を見つけて、ベッドから下りる。
「っい」
 体の節々が痛む。明史にとっては多少慣れている痛みだった。アナルも出血はひどくないようで、大きな違和感はない。
「めいじ?」
 手のひらで目を擦りながら、志音が起き上がる。明史はどんな顔をしていいのか分からず、うつむいた。
「体、痛くないか?」
 志音が近づき、抱き締めてくれようとしたが、明史が体をすくませると、その手はただ肩に触れただけだった。志音が自分に何かするわけがないのに、どうして怯えてしまうのだろう。明史はぼんやりとラグを見つめた。
「今日は里塚先生が休みにしてくれてる」
 志音は時間を確認して、扉を開ける。閉まらないように設定した後、顔を洗いながら話しかけてきた。
「俺は行くけど、おまえはここにいろ」
 核心へは触れずに、志音は着替えを済ませ、明史のためにタオルを取り出した。
「朝メシ、買ってくるから。絶対、ここにいてくれ」
 明史が頷くのを確認してから、志音はようやく出ていった。明史は顔を洗い、ソファへと座る。アナルに少し痛みが走った。
 中には出されていないが、急に気持ち悪くなり、シャワールームへ向かう。志音と大河の部屋でシャワーを使うのは申し訳ないと思っていたが、一度気持ち悪いと思うと、どうしようもなかった。
 明史は購買で購入できる下着とおそらく志音のTシャツを着せられていた。水を浴びて、脱いでいないことに気づき、目の前にあるボディソープを見つめる。
「明史!」
 志音の声に驚いて、明史は謝罪した。無断でシャワーを使ったからだと思った。目を閉じて、彼の言葉を待っていると、大きなタオルを頭にかけられた。
「水、浴びたのか?」
 明史はシャワーを見つめる。
「……うん」
 適温に保たれた室内では、いくら夏でも水を浴びれば震える。志音が濡れた服を脱いで、体を温めてから出てこいと指示した。明史は熱いシャワーを浴びてから、渡されていた大きなタオルで体と髪を拭いた。それから、カゴに用意されていた新しい下着とTシャツを着て、出ていく。
 志音は扉を開けっ放しにしていた。髪が濡れた状態の明史を見て、すぐにこちらへやって来る。
「ドライヤー、ここな」
 まだ五時半になったばかりで、大河が眠っているのに音を立てたくなかった。だが、志音は構うことなく、ドライヤーのスイッチを入れて、指先で髪に触れてくる。明史は鏡の中の自分と、笑みを見せてくれる志音を見つめた。
 髪を乾かしてもらった後、ソファに座って朝食を食べる。サンドウィッチや菓子パンがガラステーブルの上に並んでいて、明史はアップルパイに似た菓子パンを選んだ。
「志音」
 半分ほど食べたところで、話しかけた。パネルをこちらへ向けて、朝のニュース番組を見ている志音が首を傾げる。
「あの、せっかく、もらった、ベスト、ごめん」
 引き裂かれた柔らかいモカのニットベストは、どこにいったのだろう。明史は小さく体を震わせた。
「明史、抱き締めてもいいか?」
 少し距離を置いて座っていた志音が、立ち上がってそばへ寄る。頷くと、彼の体温が右側を温めた。怖がらせないように、と気づかってくれている。彼はゆっくり抱き締めてきた。

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