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spleen17

 学園から遠く離れた駅に着いた明史は、右足に負担をかけないように歩いた。駅前の喫茶店に入り、ミルクティーを注文する。リュックサックには下着と制服が入っている。黒岩の部屋へ泊まると、日曜の二十時までに寮へ帰してもらえず、月曜の朝、そのまま登校することになる。
 道路に面するテラス席から、黒岩の車が停車するのを確認して、明史は飲みかけのミルクティーを手に持った。助手席へ乗り込むと、彼がミルクティーを持ったため、リュックサックをうしろへ置く。
 車内では口を開かなかった。今までの経験から、黒岩が怒っているのだと分かる。私立の高校教師の給料がどれくらいかは知らないが、黒岩の住んでいるマンションはいわゆる高級マンションで、ワンフロアに二世帯ずつの部屋は広い。
 明史は重厚な扉の奥へ、まるで罪人が牢屋へ入れられるような雰囲気で入っていく。クッションフロアになっている床は足音を吸収していた。リビングダイニングを抜け、寝室の隣の部屋へ入る。ファミリータイプの部屋だと今さら気づいた。水川が言っていた婚約を破棄された、という話を思い出す。
 個室の中にはベッドと、その横にブルーシートが敷かれていた。パソコンとビデオカメラと並列して、卑猥な道具が置いてある。明史はリュックサックを部屋の隅へ寄せ、ベッドに座った。
「暗証番号を組み替えたこと、水川先生に指摘された」
 黒岩は隣に座ると、明史へ足元へ座るよう指示する。明史はベッドから下りて、彼の足元へひざまずいた。右足に負担をかけないように、少し足を崩す。彼の手が明史のあごをつかんだ。
「おまえ、俺のことが好きだと言ったらしいな? 脅しているのかと聞かれた」
「……すみません」
 あの時はそう言うよりほかなかった。
「いや、それでいい。今日は趣向を変えて、恋人ごっこでもするか?」
 頷けずにいると、黒岩が、「じゃあ、いつものようにするか?」と言い、明史は慌てて、首を横に振る。口で奉仕するように言われて、明史はまだ力のないペニスに手で触れ、口へと含んだ。
「俺のこと、好きか?」
 上下のくちびるでペニスを愛撫していた明史に、黒岩が尋ねてくる。明史は唾液で汚れたくちびるを拭き、「好きです」と言った。
「先生が好きか?」
「好きです」
 感情のこもっていない声だった。黒岩は鼻で笑い、ズボンのチャックからペニスを出した状態のまま、ベッドの下へ手を伸ばした。紙袋の中に入っているのは媚薬だ。明史はうつむく。
 志音のことを好きだと自覚した後では、たとえ演技でも「好き」という言葉を使うのは辛い。キャップを開けた黒岩が、明史のあごをつかむ。
「口を開けろ」
 二年間、抵抗しなかったわけではない。明史は最初の頃、黒岩に立ち向かおうとしていた。だが、自ら弱点をさらけ出していたため、抵抗は虚しく終わっていた。媚薬は甘いが、この甘さは嫌いだった。しばらくすると、体の内側から熱くなる。
「明史、セックスしたいのか?」
 頷くと、言葉にしろと言われる。
「セックス、したい」
「誰と?」
「……せんせ、と」
 ベッドに寝かされ、服を脱がされる。ノーマルなセックスだった。太股をつかまれ、アナルへぐいぐいとペニスを押し込まれる。あえぐと、黒岩が顔を近づけた。
「先生のこと、好きか?」
「っん、あ、すき、すきです」
 揺れる視界の中で、黒岩の顔が映り、彼がくちびるへキスしようとしていると気づき、明史は目を見開く。そして、すぐに手で顔を覆った。
「何だ、その手は?」
 律動を止めずに黒岩が言った。
「俺のこと、好きなんだろ?」
「き、キスは、いやっ、あ、あ、ぁあっ」
 たち上がっていた明史のペニスをつかんだ黒岩は、そのまま明史を犯し一人で射精した。

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