わかばのころ 番外編5 | ナノ





わかばのころ 番外編5

 首にある革紐の先を握ると、その手に潮がキスをした。三本目の指が入り、若葉は泣きながら、彼に思いを伝えた。痛みも怖さもなく、ただ彼を受け入れて、彼だけのものになりたいと思った。
「若葉っ」
 入れるぞ、と耳元でささやかれ、若葉は潮の肩をつかむ。潮のペニスの先端が当たると、その熱さに若葉は息を飲んだ。
「っあ、うーちゃ、んっ」
 痛くはない、と伝えた。強張っていた潮の体がしなやかに動く。じっくりとほぐしたアナルは、ちゃんと潮を受け入れた。感極まって大粒の涙が流れていく。潮も目を赤くしていた。
「うーちゃん」
 アナルがひりひりとしていたが、奥では潮が動くたびに不思議な心地よさを感じた。一つになれたという思いが心を高める。若葉は大きな声を出さないようにして、手で口元を押さえていたが、それを見た潮が手を払って、キスをしてくる。
 潮が絶頂を迎えたのは、彼の動きが緩やかに変わったことで分かった。その時、若葉はすでに射精していた。時おり、自分でしていた自慰とは全然違う。潮は出ていく前に若葉のくちびるへそっと口づけた。それから、身を引いて、コンドームを取り、若葉の腹の上をティッシュで拭く。
 ふぅーっと大きな息を吐きながら、潮が隣に寝転び、若葉を抱き締めた。汗ばんだ体が熱い。
「若葉」
 こめかみや額にキスを受け、くすぐったくて身をよじる。
「若葉、ありがとう」
 優しい瞳に見つめられ、若葉は、「俺もありがとう」と小さくささやく。たった一度つながっただけなのに、今までの安堵感とは異なる大きなものに包まれた気がした。自分達はまだ十代だ。それでも、若葉は潮以外と生きていきたいと思えない。
「前にも言ったけど、大学行ったら、一年はここから通う。おまえが合格したら、俺の親とおじさん達を説得して、二人暮らししような」
「うん」
 若葉が頷くと、潮は笑って抱き締めてくれた。
「うーちゃん」
「何?」
 若葉は背中に手を回して、「好き」と告げる。彼も同じ言葉を返した。嬉しくて涙があふれる。
「痛かったのか?」
「違うよ。嬉しいだけ」
 泣き虫、と言われて、ペットボトルを渡される。若葉は甘いアップルティーを飲んだ。本当は大学へ行く気はなかった。だが、潮と同じ大学へ行けば、彼といる時間も増え、彼と一緒に暮らせる。
 邪な理由だが、若葉の両親は若葉に進学して欲しいと願っているため、潮の行く大学へ行くと言ったら喜んでいた。潮が立ち上がり、障子窓を開ける。風はなかったが、明るい月が見える。
「おじいちゃん、来週末に田植えするって言ってたな」
「うん」
 若葉も立ち上がって窓際に寄りたいが、腰がだるく、布団の上に座り込んだ。潮が腕を取って立ち上がらせてくれる。
「……俺が大学を出たら、おじさんみたいに相馬の近くで働いて、おまえはここで米作りして、俺においしいおにぎり、食べさせてくれんの。いいだろ?」
「いいよ」
 若葉は背伸びをして潮のくちびるにキスをした。潮が腰をつかんでそのまま抱き上げてくれる。若葉はもう一度、彼の耳元で思いを告げた。

番外編4 番外編6(本編補足/潮視点)

わかばのころ top

main
top


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -