karuna19 | ナノ





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 不安をかき消すように、ハルカが抱いてくれる。ほとんど全裸に近い状態だったため、肌同士が触れ合うまで時間はかからなかった。ハルカはトキの手を握った後、トキの体を下にした。トキはハルカの顔へ手を伸ばす。
 気持ちよさそうに目を閉じたハルカに、トキは胸がいっぱいになる。冷たくしていたのは、自分のためだった。ハルカは精霊王という立場で、ヒイロの森を守らなければならない使命から逃れることができない。だが、ハルカはそれを誇りに思っている。
「ハルカ、あなたにとって俺は一瞬の存在かもしれない。でも、ほんの一瞬でも俺は、あなたのためだけに存在し……」
 言葉を最後まで紡げなかった。ハルカが優しくキスをしてくれる。黄金色の瞳が弧を描いた。
「人間と交われば、人間の寿命に合わせることになる。それを回避するために、精霊樹の試練があったんだ。トキ、おまえは私が精霊樹に宿る時、死を迎える」
 笑みを浮かべた後、ハルカは真剣な面持ちでそう語った。トキはハルカの背中へ腕を回す。精霊王の時は長い。その長い時間をこれからともに過ごせるのだ。嬉しくて泣いていると、ハルカが力強く抱き締めてくれた。
 しばらく互いの熱を確認した後、ハルカの指先がトキのペニスへ触れる。トキは少し体を強張らせた。ひどいことはしない、とハルカの声が聞こえた。トキが頷くと、ハルカは指先でアナルの場所を確認する。
 何度も経験している行為のはずなのに、トキは緊張していた。ハルカの指先がアナルを探る。中はいつも傷つき、血を流していたが、ハルカの精気によって、体中の傷が消えていた。
 精霊は人間のような性行為をしない。だが、交われば、射精こそないものの、快感は得られる。トキは自分の中へ入ってきたハルカを感じながら、甘い息を吐いた。痛みはまったくない。ただ満たされる感覚と快感だけが、心と体を支配していた。
 トキはハルカの髪へ指を絡める。ハルカがゆっくりと確実に前立腺を突いた。
「っあ、アア、あっん、あ」
 トキのたち上がったぺニスから先走りが流れていく。トキ、と名を呼ばれ、うっすら目を開くと、黄金色の瞳が見下ろしていた。ハルカの手がペニスをいじる。腰の律動と同時に絶頂へ押し上げられ、白濁の液体が腹へ散った。ハルカの舌が精液を丁寧になめとる。
 くすぐったくて身をよじりながら笑うと、ハルカが腕の中で抱き締めてくれる。存在を確かめるように動いた指先が心地よくて、トキは目を閉じた。

 別室で過ごしていたトクサに会ったのは、ヒイロの森へ来てから七日ほど後だった。目が見えるようになってから初めて彼を見る。ダークブラウンの瞳と同じような色の髪はところどころ跳ねていた。だが、思っていた通り、凛々しい顔立ちの人間だった。
「トキ……」
 トクサは顔に似合わない、情けない涙声を出した。トキの前で両ひざをつき、彼は大げさに手を上げた。
「歩けるようになったのか? おまえ一人、どこかに連れていかれて、俺、何かあったらどうしようかと思った」
 トキはトクサにほほ笑みかける。
「あ、目も……?」
 焦点を合わせたトキに、トクサが目を丸くさせる。トキが頷くと、彼はトキの手を握り、喜んでくれた。
「トクサ、俺のこと、信頼して、ここまで連れてきてくれてありがとう」
 トキが礼を言うと、トクサは首を横に振る。
「ここへ来た時は何だか精霊達も悲しそうで、何か嫌なことが起きそうな気がしたが、少し前から皆、明るくなって、何ていうか、すごく幸せそうなんだ。おまえも元気になってよかった」
 トキがハルカを連れてきた時、試練のことを知っていたのはハルカだけだった。その後、精霊達の知るところとなり、トキが慈しみの心で己を犠牲にできるかどうか、気をもんでいたようだ。
 精霊達の和やかな雰囲気は、トキ自身も感じていた。不安がなくなり、精霊王に伴侶ができたことを祝福している。ヒイロの森の緑は以前よりもいっそう濃くなっていた。

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