And I am...32 | ナノ





And I am...32

 クリスマスの後、二十七日まで出勤した総一郎は、年明けの五日までが休みだと言った。洋平はまだ長時間立ったり、歩いたりはできないが、家にいて自分にできることから始めていた。クリスマスディナーは自分で用意したかったが、洋平の負担を減らしたい総一郎から、今年は外で済まそうと提案された。
 プレゼントは何一つ用意できず、つくされてばかりの洋平だが、総一郎がそれで満足しているのなら、としだいに卑屈な思いは消え、代わりに感謝の言葉を口にするようにした。ホームドクターから彼が禁煙していると聞き、その思いがただの気まぐれではないと分かったからだ。
 総一郎は原野の家から洋平を連れ帰った後、ホームドクターから洋平の喉のことを聞き、煙草の煙もよくないと言われた。その後から、彼は家では吸わなくなり、今は煙草すら持っていない。少しアルコールが多くなった気はするが、無茶な飲み方ではなかった。
「総一郎さん」
 スタンドライトで手元を照らし、双眼鏡の準備をしていた総一郎が顔を上げた。
「暗くないか? 足元、気をつけろ」
 寝袋が敷いてあることを確認して、洋平は持っていたトレイの上にある飲み物をこぼさないように歩いた。年末のテレビ番組は面白くないから、と星を見ることにした。プレアデス星団は望遠鏡ではなく、双眼鏡のほうがよく見えるらしい。総一郎が立ち上がり、廊下へ続く扉を閉めた。スタンドライトも消すと、天窓からの星の光だけが室内を照らす。部屋の中なのに、まるで外にいるみたいだ。
 この部屋にも冷暖房は完備されており、そこまで寒くはなかったが、二人はあえて寝袋を用意して、その中へ入った。総一郎が双眼鏡の使い方を教えてくれる。まずは視度を合わせて、次に焦点を合わせる、と説明され、彼が見せてくれた通りにした。
「ほら、あの六つくらい他の星より光っている星が見えるか?」
 総一郎が指を向けた方角には、確かに肉眼でも確認できる星が見えた。
「あれがプレアデス星団だ。双眼鏡で見てみろ。焦点を調節しながら……」
 洋平は双眼鏡を当てて、総一郎の説明を聞きながら、星を見た。淡いブルーの光をまとった強く輝く星々に感動して、平凡な言葉しか出てこない。
「……すごくきれい」
「あぁ」
 一度、双眼鏡を外して総一郎を見ると、彼はこちらを見ていた。洋平は笑いかけて、また双眼鏡を当て、星を観察する。アクアリウムとは違う美しさにすっかり魅了された。洋平が飽くことなく眺めていると、うしろから寝袋ごと総一郎に抱き締められる。双眼鏡を外して、振り返ると、彼にくちびるを奪われた。そのまま、双眼鏡を脇へ置き、彼と向き合う形になる。
 洋平は服を脱がせる総一郎の指先にすら感じていた。勃起しないのではないか、という恐れは、目の前の彼に求められているという事実によって消え去った。彼が慈しむように、体のいたるところへキスをくれる。脇腹と左腕は特に入念な愛撫を受けた。男とは初めてだと言っていたが、彼にぎこちなさはなかった。必要な物を取りにいった後、一度だけ愛撫をやめた彼が、寝室へ移動するか尋ねてきた。
「ここがいいです」
 洋平がそう言うと、総一郎は寝袋を並べた。その上へ洋平の体を寝かせて、優しくアナルを解してくれる。彼は左手で髪をなでたり、頬へ触れたりしていたが、最後に右手を握ってくれた。たち上がっているペニスを舌でなめられて、体を揺らす。
「っあ、そう、いちろ、さん、そこ、は」
 口淫はするばかりで、されることがほとんどないため、洋平はすぐに感じてしまう。それを見た総一郎はそのまま口へくわえて、洋平のアナルをいじった。洋平のペニスが完全に勃起すると、彼は自身のペニスをアナルへ当てる。洋平は熱いものを感じながら、呼吸を整えた。先ほどまで淫らに喘いでいたが、今は小さな吐息しか漏れない。視線を上げると、真剣な面持ちの総一郎が、腰を進めると同時に上半身を倒して、洋平へキスをした。
 自分の嬌声に混じって、総一郎が耳元で愛の言葉をささやく。洋平はそれにこたえながら、彼の動きに翻弄された。好きな人とのセックスは気持ちがよくて、前を触らなくてもいけると聞いたことがある。洋平は彼が動くたびに発生する快感に声を漏らしながら、絶頂を迎える寸前、天窓を見上げた。きらきらと星が輝いている。視線を落とすと、自分の上にいる総一郎が中で達していた。洋平を感じるように目を閉じて、荒い息を吐いている。
 総一郎は一度、洋平のくちびるへキスをした後、左足にあるクリスマスに贈ったアンクレットへもキスをした。くすぐったくて身をよじると、彼が寝転び、ぎゅっと体を抱き締めてくる。互いの顔が近づいた。
「俺、幸せです」
 ささやくように告げた。
「もっと幸せにする」
 総一郎が自信にあふれた笑みで言い、それを誓うために、くちびるへキスをくれた。
 


【終】

31 番外編1(総一郎視点)

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