And I am...7 | ナノ





And I am...7

 一週間もの間、寝込んでしまった洋平は、七日目の朝、ようやく布団から起き上がることができた。寝込んでいる間、会田達は仕事があるにもかかわらず、まったく嫌な顔も見せず、洋平のことを交代で看病してくれた。ちょうど日曜で、会田も休みと聞いており、洋平は早めに起きて、布団を干そうと思いついた。
 起こさないように階段を下りると、すでに台所で朝食の準備をしている二人がいた。看病されながら気づいたことだが、会田と牧は恋人同士だ。今も、みそ汁の味つけをしている会田のうしろから、牧が抱きついて耳へキスを落としている。冷房の代わりに扇風機が首を回していた。入り込めない雰囲気に階下で立ちすくんでいると、みそを冷蔵庫に入れようと振り返った会田が気づく。
「あ、若野さん、おはようございます。もう大丈夫ですか?」
 少しも照れていないように見えたが、会田は耳まで真っ赤に染めていた。洋平はほほ笑んでから、頭を下げる。
「もう大丈夫です。本当にありがとうございました」
「シャワー、浴びる? 修の予備パンツで新しいのなかったっけ?」
 牧は洋平に聞いた後、今度は会田のほうへ視線を移して聞いた。
「あー、うん。確かいくつか予備があると……若野さん、下着は新しいのがあるので、安心してくださいね」
 階段を上がった会田に気を取られていると、牧が浴室の扉を開けてくれる。シャワーの温度調節の方法やシャンプーとボディソープの場所を教えてもらい、頷いていると、会田がバスタオルとおそらく彼の服を貸してくれた。
「本当に何から何まで……」
 もう一度、頭を下げようとすると、牧が肩に手を置いて止めた。不思議に思い、顔を上げる。
「迷惑だなんて思ってないから、目処が立つまでここにいたらいい。うちはよく友達とか色々、泊まりに来るんだよ。だから、泊めたり、一緒に生活するのは慣れてる」
 遠慮するな、と続けられ、洋平は視界をにじませた。会田が明るい調子で朝食を準備して待っているから、汗を流したらいいと言ってくれる。シャワーを浴びながら、洋平はずっと泣いていたが、二人の前に座る頃には落ち着いた。和食でそろえられた朝食を食べた後、片づけを手伝わせてもらった。布団をガレージに干して、財布の中にあった一万円札を渡そうと試みたが、二人が受け取ることはなかった。
 だが、好意に甘えて本当に目処が立つまでここにいるわけにはいかない。洋平は携帯電話の番号を書いた。
「お二人には感謝してます。でも、ここにいたら甘えてしまって、俺、意思も弱くて、いつまでも自立できなくなりそうで、ダメなんです。ちゃんと仕事を見つけて、落ち着いたら必ずお礼に来ます。本当にありがとうございました」
 二人がそれ以上、引きとめることはなかったが、会田は彼と牧の番号を書いて渡してくれる。
「もし、何かあったら、いつでも、どっちの番号でもいいから、電話してください。それと、店にもまた来てくださいね」
 会田からここへ来た時に着ていた服を渡される。アイロンをかけた状態で、きれいにたたまれていた。いずれにしても、今着ている服を返さなければいけない。いつか必ず二人を訪ねようと心に決めて、洋平はもう一度、頭を下げ、炎天下の外へと出た。

 駅のほうへ向かう途中で見つけた公園で、洋平は少し休憩した。携帯電話を取り出して、求人情報を眺める。会田達の優しさに踏み出す勇気をもらった気がしていたのに、実際に行動を移そうとすると、途端に気力がなえてくる。自分の弱さに辟易しながら、その手のサイトを見た。
 露骨に奴隷募集や売りの内容が掲載されている。その中でまともな書き込みを探した。セミの声を聞きながら、不意に視線を上げる。小学校に上がる前の子ども達が母親と遊びに来ていた。それを見ていると、自分のしていることがひどく汚いことに思えてくる。
 洋平は携帯電話を閉じて立ち上がった。やはり真面目に仕事を探そうと思う。幸い、財布には一万円札が三枚あった。ネットカフェでしのぎながら、どこでもいいから、雇ってもらえるところを探すことにした。

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