あおにしずむ 番外編6 | ナノ





あおにしずむ 番外編6

 バゲットにハムとクリームチーズをのせて、ヤニックは口を開けてかじりついた。朝食はクロワッサンやパンケーキに果物のコンフィチュールの組み合わせが圧倒的に多い。だが、時おり、ハムやチーズも食べたくなった。空腹感で目覚めたため、外はまだ薄暗い。日曜は唯一、寝坊ができる日でもある。
 ロビーはまだ眠っていた。ヤニックはキッチンで立ったままの朝食を終えた後、朝霧でぼんやりとした外の景色を見つめた。緑の中に立ちこめる白い霧が幻想的だった。ここにいると、心が落ち着く。仕事で出かけることはあるが、ここへ戻ってくると分かっているからこそ、外へ出ていくことができる。
 買い物へ行く時も、ロビーがわざわざ南の街へ車を出してくれる。だいたい二週間に一回程度、大型ショッピングセンターで食料品や必需品を買い込んでいた。時々、祖母も一緒だが、最近はたいてい二人で出かける。知り合いはほとんどいないから、ゆっくりと二人で中を回ることができる。
 大きなショッピングカートを押しながら、ロビーと一緒に歩き回るのは楽しい。こんなにも穏やかな日々を与えてくれる彼に感謝していた。
「ヤニック?」
 声をかけられて、振り返る。ロビーがあくびをしながら、「早いね」と言った。
「何かお腹が空いて、起きたんだ」
 笑って言うと、ロビーも笑った。
「あぁ、それで」
 ロビーが納得したように言い、近づいてくる。彼が屈んだので、ヤニックは目を閉じた。キスをしてくれると分かったからだ。だが、彼はキスをしなかった。彼の舌がくちびるの端をなめる。
「クリームチーズがついてたよ」
 そのまま抱かれて、ロビーの中心部が硬くなっていることに気づいた。体温の高い彼に抱かれると、自分にまでその熱が宿りそうになる。
「ロビー……っ」
 抱き締しめた手が腰から尻へ落ち、そのままなでるように動く。とがめているのではない。恥ずかしくて、見上げていた視線を落とした。朝から欲情するなんて、慎みがない気がしてくる。もっとも、夜の営みは最低でも週に三回はある。自ら求めることも少なくない。
 ヤニックはそれをロビーのせいにしている。彼は絶対に彼の快楽だけを優先させない。初めての時、アナルが傷つかなくて済んだのも、ペニスが勃起するようになったのも、彼が根気よくヤニックの体を慣らしたからだ。
 その気がなくても触れられれば、そういう気分になる。ロビーのくちびるがヤニックの指先へ口づけを落とす。視線を上げると、彼は無垢な子どもみたいに首を傾げた。格好いいのに、こういう時は可愛いと思う。頷くと、彼は嬉しそうに笑った。
 ベッドの上で裸になり、抱き合う。夜はいつも照明をつけたまました。顔が見えないのは怖いからだ。薄暗かった外は少し明るくなっていた。前戯の最中、ヤニックはほとんど何もしない。キスをされたら返すくらいで、ロビーに任せている。彼は優しいキスをたくさんくれる。おそらくお気に入りの場所はヤニックの肩だ。よくそこを甘噛みしては、首筋に鼻を寄せてくる。くすぐったいのに、行為の時はとても感じる。
 言葉はほとんどない。アナルを解していた指の存在が消えると、ロビーの熱いペニスが中へ入ってくる。彼はちゃんとヤニックの感じる場所を心得ており、そこを中心に腰を動かしてくる。
「っあ、ぁあ、ン」
 ロビーの大きな左手がヤニックの右手を握り締める。彼は腰を動かしながら、上半身を倒して、ヤニックの左耳をなめた。キスをしたり、くちびるで食んだりする。それだけで、ヤニックはアナルの中から生まれている快感とともに、こらえていた声を出してしまう。本当は声を出したくないが、彼は聞きたいと言っていた。
「ぁ、ろ、ンぁ、ロビーっ、ああ」
 名前を呼ぶと、中で彼自身がひときわ大きくなる。絶頂を迎えた後の甘い余韻がヤニックを包む。ロビーはコンドームをゴミ箱へ捨てると、ヤニックの精液で汚れるのも構わず、腕の中に抱き締めてくれた。手を伸ばして、彼のブロンドの髪をなでると、彼は嬉しそうに目を閉じる。汗と汚れを流したいと思ったが、ヤニックもそのまま眠ってしまった。
 昼近くに起きた時、ヤニックの体はきれいになっており、きちんとTシャツを着せられていた。テーブルの上にはおそらく摘んできたであろう草花が、花瓶に入れられている。ヤニックがここへ住み始めてから、欠かされることのない習慣だった。ロビーはいつも日曜の朝に、小さな花束を作り、テーブルへ飾る。ヤニックはそっと鼻を近づけ、花の香りを楽しんだ後、ロビーを探しに部屋を出た。温室で雑誌を読んでいる彼を見つけると、ヤニックは心から幸せだと思い、ほほ笑んだ。

番外編5 番外編7(本編から15年後くらい/ヤニック視点)

あおにしずむ top
main
top


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -