あおにしずむ 番外編2 | ナノ





あおにしずむ 番外編2

 結局、法律は追いついてくれなかったが、あの時、生まれた恋心は高校で出会うまで大事に育まれた。オリエンテーションで彼を見つけた時、まだ追いつかない法律を恨むと同時に、そんな紙切れ一枚どうでもいいという気分になった。
 話しかけたくて、仕方なかった。ヤニックは学校内で人気グループに属しており、ティムのガードも固かった。だが、ロビーが思っていた通り、ヤニックは優しい子だった。誰にでも話しかけ、理由もなく拒絶しない。
 ロビーは自分の薬指にはめてある指輪とヤニックの薬指にある指輪を見比べた。大きさが違うだけで同じデザインだ。この国は同性婚を認めていないが、代わりに新しい法律ができた。結婚と同等の権利を同棲しているカップルに与えるものだ。
 ヤニックが二十歳になるのを待って、その契約を交わし、教会で式をするのではなく、身内だけでひっそりパーティーをした。
 今年で二十五歳になるヤニックは、老いを見せない。幼い寝顔にキスをすると、小さく身じろいだ。
 あの夜、明るい照明をつけながら、ロビーはヤニックのすべてを目に焼きつけた。初めての夜はうまくいかなかった。どうしても、と言った彼の言葉に押されて、準備だけはしていた潤滑ジェルを使い、彼のアナルを指で開いた。
 うつ伏せを嫌がるヤニックのために、ロビーはなるべく負担をかけないように、彼の一挙手一投足を確認しながら、前立腺を探った。元々、色が白いヤニックの肩口はそばかすがあり、そういうところまでとても愛しく感じて、なめたり、甘噛みしたりした。
 フラッシュバックを起こさないよう、ロビーは時おり、ヤニックの名前を呼び、手を握った。前立腺を二本の指で擦りながら、彼の緩くたち上がったペニスも刺激する。
 射精する前に、ヤニックは眠っていた。涙の痕が残る頬を見て、胸が痛くなる。精神的な疲れが先に出たのだろう。ロビーはヤニックのペニスを何度か扱き、精液を吐き出させた。
 濡れタオルでアナルの周囲とペニスを拭き、そっと髪をなでる。それから、ロビーはバスルームで自らペニスを扱いた。昔を思い出して笑ってしまう。初めて眠っている間に勃起した時、ロビーはヤニックの面影を思い出して抜いていた。二日目の夜も同じように終わった。
 ヤニックは三日目の夜、眠らなかった。アナルへ三本の指を受け入れ、泣きながら、ロビーのことが欲しいと言った。そんなふうに言われても、ロビーが理性を失うことはなかった。
 落ち着いて、ヤニックのアナルを解し、自分は一度抜いてから、ようやく彼の体と向き合った。
「ヤニック、痛かったり、怖くなったりしたら、すぐ言って」
 ヤニックが泣きながら何度も頷く。ロビーは彼の手を握って、額や頬にキスをしながら、解していたアナルへペニスをあてがう。ゆっくりと入れたが、入れた瞬間、彼の体が強張った。やめようか、と思っていると、目を開いた彼が、首を横に振る。
「ずっと、あなた、なら、いいって、痛くても平気って思ってた。ロビー、愛してる。ずっと愛してる、すごく好き」
 ロビーは泣きながら、ヤニックのくちびるへキスをした。下半身を押し込むように、彼の奥へ入っていく。くちびるを離すと、甘い息が漏れた。もっと深く、キスをしながら腰を動かす。彼の中は熱くて、気持ちよかった。自分がいく前に、彼のペニスへ触れる。先走りでぬめるペニスを擦ると、彼の中が締まった。

 ヤニックはあの時、無理をしてでも体をつなげてよかったと言っていた。時間をおいても彼は恐れるだけで、セックスは痛いものだと植えつけられた先入観を拭うことができなかったと苦笑していた。
 陽だまりがまた動いていく。窓から抜けた風がロビーの髪を揺らした。来月、隣国で行われる展示会に、ヤニックの作品も並ぶことになっている。言葉が分からないから、ついて来て欲しいと言われていた。ロビーも大して分からないが、そういうことでもなければ、休みはない。
 二人きりでどこかへ出かけるのは初めてのことだ。農園の仕事は祖母だけでは回せないため、いとこのライル夫婦が家族で来てくれるようになっている。たったの二泊三日だが、ロビーは楽しみにしていた。
 股の間でヤニックが動く。もうすぐ起きるのが分かり、ロビーはその頬を指先でなでた。優しい笑顔で愛しい人を迎える。おはよう、と言えば、彼は大きく伸びをして、振り返る。彼もまた、自分のためにだけ笑みを浮かべてくれる。温室の天井から入る屈折した射光が床で陽だまりを作り、光の世界の中にたった二人だけのような錯覚を起こす。ロビーは幸せだと思い、いったいどんな方法でそれを彼に伝えようか考えた。

番外編1 番外編3(本編から10年後くらい/ロビー視点)

あおにしずむ top
main
top


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -