あおにしずむ29 | ナノ





あおにしずむ29

 校内へは入らず、ヤニックは外でロビーが出てくるのを待っていた。校門前だと目立つため、学校から一区画離れた道路にいる。孫の晴れ姿を見るために、彼の祖母も来ているはずで、つまり、彼はトラックで登校している可能性が高い。帰りは必ずこの道を通るだろう。
 ヤニックは卒業祝いの贈り物を持っていた。小遣いで買える範囲で、ロビーに普段から使ってもらえる物、と考えた結果、ハンドタオルになってしまったが、友人に贈る物としては妥当だと思う。
 出血が続いていたアナルは昨日からようやく落ち着いた。鎮痛剤のおかげで痛みもほとんど消え、夜は睡眠薬を一錠飲めば、ちゃんと眠ることができた。昨日、髪を染め直して、伸びていた襟足だけ自分で切った。少し前髪が邪魔になっているが、前髪は失敗したら取り返しがつかないため、仕方なく耳へかけるように流した。
 トラックが来ると思っていたため、ヤニックはずっとトラックを探していた。だから、国産車がハザードランプをつけて停止した時、ヤニックはまだ逆方向を向いていた。
「ヤニック!」
 正装したロビーが運転席から出てくる。少し見ない間に、幼さが消え、とても男らしい顔立ちになっていた。顔を見続けているとどきどきしてくる。ヤニックは視線を落としてから、国産車を見た。助手席にいる祖母が手を振ってくれる。
「卒業おめでとう」
 ヤニックはロビーの体を抱き締めた。彼の大きな手が背中に回る。
「ありがとう」
「これ、卒業祝い」
 包みを渡すと、ロビーが笑みを浮かべた。
「うわー、ありがとう! 気、つかわなくていいのに。すぐに開けたいけど、とりあえず、家に帰ろう。乗って、乗って」
 後部座席を開けてくれたロビーの手が、肩を押した。思わず痛みに顔をしかめると、彼は驚いて手を離す。
「ごめん、強く押し過ぎた?」
「違うよ。大丈夫。乗っていいの?」
「もちろん。昼、一緒に食べよう。ばあちゃんがご馳走、作ってくれるから」
 後部座席に座り、助手席の祖母へあいさつをすると、彼女は久しぶりに会ったこともあり、とても喜んだ。アルバイトの件も謝罪する。
「まぁ、ヤニックは真面目な子ね。気にしなくていいのよ。勉強は大切だわ」
 いつもトラックしか見たことがなかったため、自家用車があるとは知らなかった。家に着くと、彼は家の前ではなくビニールハウスの向こう側にあるガレージに駐車した。
「先、入ってて」
 ロビーの祖母と一緒に玄関へ向かって歩きながら、ヤニックはロビーのほうを振り返った。彼はガレージにある道具をいくつか持ってから、こちらへ向かって歩き出す。キッチンにはすでに下準備の済んだ食材が並んでいた。
「手伝います」
 ヤニックが申し出ると、祖母は笑って、「お客様だから」と座らせてくれた。リビングのテーブル席へ座っていたが、暖炉の上に並ぶ写真を見つけて、立ち上がる。
 小さい頃のロビーがおそらく彼の両親とともに写っていた。小学校の入学式の時の写真は祖父母と一緒に写っている。知らない学校だった。並んだ写真立ての一つに、この間見たブロンドの青年がいた。
「いとこのライルだよ」
 背後に立ったロビーが昔住んでいた都市の名前を教えてくれる。ここからずっと北にある街だった。ロビーはそこで生まれ、両親を不慮の事故で亡くす十歳までをその土地で過ごした。母方の妹の子どもがライルで、両親が亡くなった後、ロビーを引き取ると言ってくれたが、ロビーは小さい頃から草花が好きだったため、祖父母の元で暮らすことに決めたらしい。

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