あおにしずむ27 | ナノ





あおにしずむ27

 ティム達の相手をする時は諦めて大人しくしていた。抵抗すれば股間を攻撃される恐怖もあった。だが、今は可能な限り抵抗していた。そのたびに顔と頭以外を殴られたが、ヤニックは必死に体を動かした。
 ウェインが自分のことを嫌っていると分かった時、とても悲しかった。その理由がティムに気に入られているから、という理解しがたいものだから、衝撃は大きい。だが、相手を嫌うことにいちいち納得できるような理由などいらないことも分かっている。
 サッカークラブの連中は、ほとんどが興味本位で、まだ慣らしもしていないヤニックのアナルへペニスを突っ込んだ。ティムのように小さな張り型で慣らすことをしなかったため、アナルの中が裂ける。だが、その痛みは彼らの痛みではない。気づかいは一切なく、体を揺すられた。
「ンーっ、ぐっ、ぅ、ん……」
 ヤニックがうなりながらも徐々に抵抗しなくなり、ただ泣いているだけになると、ようやくガムテープがはがされた。すぐに口の中へもペニスを突っ込まれる。誰がいるのかも、何人いるのかも分からない状態だった。ヤニックはいつの間にか裸になっており、体の上に精液をかけられていた。指先の感覚すらなくなった時、ベンチに座っていたウェインが立ち上がって、耳元へ顔を寄せてきた。
「目ざわりだから、消えろ」
 その言葉を聞いた連中が不満の声を上げる。
「えー、何でそんなこと言うんだよ? 来てくれないと、つまんない」
「ヤニック、クラブに再入部していいぜ。俺達の下の世話係としてだけど」
 笑い声が遠ざかった後、ヤニックは嗚咽を漏らしながら、這うようにして、シャワールームのほうへ向かった。体中が汚れていた。口の中の不快感はひどく、油断すると吐きそうだ。下着をはこうとして、太股の内側を走る血に気づいた。最初の時も血が出ていた。だが、こんなふうにはっきりと目で見たのは初めてで、パニックになる。
 ヤニックは急いでジーンズをはき、上着を着た。リュックサックの中から携帯電話を取り出す。母親には言えない。着信履歴を見ると、ロビーからかかってきていた。今夜、立ち寄ると言っていたことを思い出し、その場に座り込む。
 行けるわけがなかった。ロビーにも話すわけにはいかない。止まっていた嗚咽がまた漏れた。消えろ、というウェインの声が再生される。ヤニックは立ち上がることができなかった。携帯電話を握り締めて、そのまま横になる。非常灯が照らすロッカールームは薄暗く、ヤニックは涙を流しながら目を閉じた。このまま意識を静めて、二度と目が開かなくなればいいと本気で思った。
 だが、体は寒さに震え、心は絶望によって痛みを訴えており、眠ることすらできない。周囲が明るくなった頃、ヤニックは涙で腫れた目を擦って、起き上がった。こんな時でさえ、母親が帰ってくるまでに部屋へ入らなければならないと考えている自分がおかしかった。青アザだらけの体を見せて、「学校へ行きたくない」と言えば、行かなくていいと言ってくれるだろうか。

 ヤニックは部屋までたどり着くと、ジーンズと下着だけ着替えてベッドへ潜った。思考を開始する前に、体の欲求に勝てず目を閉じる。今日は眠れるかもしれない。そう思って、うとうとし始めた時、ノックの音が聞こえた。
「ヤニック! 遅刻するわっ」
 母親の高い声に目を開けたヤニックは、体中の痛みと戦いながら、体を仰向けにした。
「母さん、俺、熱があって、今日はムリ」
「何、言ってるの? 行かないと落第する……昨日のテストはどうだったの?」
 窓を開けようとした母親はようやくヤニックのほうを見た。それから、彼女は驚いて、声を上げる。
「どうしたの、その目。泣いたの? 腫れてるじゃない」
 すぐに冷たいタオルを持ってきてくれた彼女は、ヤニックのまぶたの上にタオルを置いてくれた。
「そんなにできなかったの?」
 見極め試験がうまくいかずに泣いていたと思われているらしい。ヤニックは小さく頷いた。すぐに彼女が頬にキスをくれる。
「大丈夫。この間は悪かったわ。あなたには必ず高校を出させるって決めてる。本当は大学まで行かせようって決めてたのに、色々、うまくいかなくて……お金のことは何も心配しないで。だから、落第してもちゃんと卒業するのよ」
 心が悲鳴を上げている。喉から出そうになる嗚咽を飲み込み、ヤニックはタオルによって遮られた暗い世界で泣いた。

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