あおにしずむ20 | ナノ





あおにしずむ20

 残酷な言葉に、ヤニックは両手で股間を隠そうとしたが、ウェインが袋から手錠を取り出して、うしろ手にして拘束した。最初に受けたダメージが股間から腰までを麻痺させていて、ヤニックは立ち上がることもできない。二度目の蹴りを股間に受けた時、ヤニックは一時、呼吸すらできなくなった。
「このまま蹴り続けたら不能になるな。ホモのおまえにはちょうどいいんじゃない?」
 ウェインがそう言って、けらけらと笑う。衝撃の後の痛みはまだ続いていて、背骨のあたりまでおかしな感覚だった。次から次へ頬をつたう涙で、視界が不明瞭になる。嗚咽のせいで乱れた呼吸が鼻から抜けていった。
「ヤニック」
 ティムが転がっているヤニックの股間の上に足を置いた。
「正直にこたえるだけでいい。ティナをレイプしようとしただろ?」
 口にガムテープをはられた状態で、股間にはティムの右足がある。質問には頷く以外の選択肢がなく、それは脅しでしかなかった。泣きながら、首を横に振ろうとすると、ほんの少し横に振っただけで、ティムは右足に力を込めてくる。パニックになりながら、首を縦に動かすと、ティムの足が離れた。
「パック、同じ恐怖を味合わせてやれよ」
 ウェインがあおるように言った。だが、パックは乗り気ではなかった。
「俺、男は無理だ」
 ウェインが袋を差し出す。
「別におまえのをぶち込まなくても、これ使えばいいだろ」
 中から取り出した張り型を、ウェインがパックへ渡した。
「……でも、ケツだろ? クソとかつきそうで、俺、そういうの苦手だから」
 ヤニックは鉛のように重たくなっている体を動かした。パックが手にしている張り型を見て、背筋が凍りつく。泣き過ぎたのか、これから起こることへの恐怖のせいか、頭が痛み出した。ヤニックはいないと分かっていても、ロッカールームの中でロビーの姿を捜す。心の中で、ずっと彼の名前を呼び続けた。
 不意に視線がティムと絡む。ティムはベンチに座っていた。王様みたいに長い足を組んで、こちらを見下ろしている。馬鹿みたいに笑い合ったことがあるなんて、肩を叩き合ったことがあるなんて、すべて嘘のように、冷たい瞳を光らせていた。
「ウェイン、下だけ脱がせろ。パック、シャワールームに運ぶの手伝え」
 蹴られた痛みがまだ残っている。抵抗は考えられなかった。ヤニックはウェインの手によって簡単に下半身だけを裸にされた。今までプールなどで何度も肌をさらしているが、ヤニックは羞恥を感じて、体を丸めようとした。だが、ティムの命令通り、パック達によって、シャワールームのほうへ引きずられる。
 ヤニックは処刑台に上がる罪人の気分だった。絶望しかない。だが、絶望から解放されるという意味では、処刑台の罪人のほうがまだ救いがあると思った。これが最初で終わりがない。ずっと落下していく。突き出した尻を足で蹴られた後、アナルの中に液体を入れられた。
 数分すると、便意を催してくる。差し込みに耐えても、無駄なことだった。言葉を奪われ、手を拘束されている状態では、トイレに行きたいと主張できず、そのままシャワールームでするしかない。
 日常からかけ離れた状況に、正常な思考がはがれていく。ウェインがヤニックの排泄行為を面白おかしく実況した。ティムはすぐに流してくれたが、非情にも三回、浣腸液を注入した。ロッカールームには暖房がないため、外の寒さと同じだった。だが、ヤニックは汗をかいていた。そして、汗をかいているのに、寒さと恐怖で震えていた。
 アナルを洗浄した後、ティムがウェインから細めの張り型を受け取る。甘ったるいにおいのするローションを塗られた。
「っう、ぐぅうっ、ウウっ」
 言葉の代わりに獣じみた音だけが漏れる。ヤニックは目を閉じて全身を強張らせた。夢に違いない。こんなことをされる覚えはない。自分はまだ眠っているだけだ。

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