あおにしずむ17 | ナノ





あおにしずむ17

「俺このままシャワー行くから」
 汗だくのロビーが泥だらけの手をタオルで拭う。
「軽いもの、何か食べるかい?」
「うん、あ、昨日の残りのスープでいい」
 ロビーの祖母はヤニックにもスープを用意してくれた。彼は汗をかいていたが、ヤニックは寒かったため、熱いスープはご馳走だ。
 リビングのテーブルに向かい合い、二人で食事する。カブのスープと焼きたてのパンだけだが、おいしい。暖炉では温かい炎が揺れていた。市内の団地に住んでいるヤニックにとっては、薪の暖炉は珍しい。暖炉でここまで部屋を温かく保つことができるとは知らなかった。
 向かいに座っているロビーは、パンをスープに少しだけ浸してから口へ運んでいる。ヒゲにスープがつきそうになり、彼は笑った。ヒゲは髪と同じブロンドだが、髪よりも色が濃い。彼の持つふんわりとした雰囲気が、疲労のせいか、シャープに変わっていた。
 それでも、こちらを見て笑みを浮かべるロビーはやはり本質を変えていない。食べるところを見られるのが、恥ずかしいと感じたことはなかったのに、彼の前だと妙に意識してしまう。
「ロビー、人を雇う話なんだがね」
「またその話? 俺一人で回せるから大丈夫だよ」
 ロビーの祖母がこちらを見てウィンクする。
「二月頃から一人アルバイトを雇うことにした」
「え、何で勝手に……」
「イースターは忙しいからね。ヤニックが来てくれるって言うんだ」
 パンを握ったまま、ロビーがこちらを凝視している。彼は祖母に尋ねた。
「脅した?」
「失礼な子だね」
 ヤニックは笑ってしまう。
「俺が働きたいって言ったんだ。アルバイトできるところ、探してて。嫌ならいいよ。俺、実際、知識とかなくて迷惑かけるだけかもしれないから」
 ロビーが両手を挙げる。
「まさか! 嫌なわけないだろう。君なら大歓迎だ」
 雪道は危ないから送ると言われ、ヤニックは大人しく自転車を荷台へ積んでもらった。スイセンの鉢を太股の上に乗せると、ロビーがエンジンをかける。
「ばあちゃんの相手してくれて、ありがとう。話し相手がいなくて、寂しかったと思うんだ。君が遊びにきてくれてよかった。明日、学校だろ?」
「あなたも?」
 ロビーが頷く。
「ヒゲ、そらなきゃな」
「あってもクールだよ」
「そう?」
 ギアを入れ替えながら、ロビーがトラックを走らせる。時おり、こちらを向いて、ポーズを決めた。それがおかしくて声を立てて笑うと、彼も笑い声を上げる。永遠にドライブしていたいと思った。
「二月から本当に来る?」
 自転車を下ろしてもらい、鉢を脇に抱えた状態で、ロビーが帰るのを見送る。去り際、彼は真顔で聞いてきた。
「うん。俺、働きたい」
 ロビーは笑みを浮かべて、そっとヤニックの髪に触れた。かすめるだけのキスを髪に受ける。シャワーを浴びた彼からは、さわやかなボディソープの香りがした。また変な気分になる。
「じゃ、また明日」
 トラックが走り去った後、ヤニックは自転車を置いて、部屋へ上がった。死角になった植え込みの人影にはまったく気づかなかった。

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