あおにしずむ2 | ナノ





あおにしずむ2

 ヤニックが小学校の頃に、母親が離婚した。酒ばかり飲んでいた父親にいいイメージはない。最近、母親に恋人ができたようだが、紹介はまだだ。彼女もなかなか恋多き人間で、紹介されてからダメになったケースは多い。
 音楽の音量を上げて体をベッドへ投げ出す。明日までの宿題をしたいが、まぶたは気持ちと反比例して重くなっていく。瞳を輝かせていたロビーのことを思い出した。サッカークラブの人間でもないのに、ヤニック達のグループへ入ろうとする彼は不思議だった。
 ヤニック自身はあまりそういったことを気にしないが、ティム達は公然と態度に出している。面倒なことにならなければいい、と思いながら眠った。

 あまりよく分からなかった数学の授業が終わり、ロッカーの中へ教科書と問題集を突っ込んでいると、教室から出てきたロビーがさっそうと出てきた。
「ヤニック、数学だったんだ?」
 淡いブロンドの髪をかきながら、ロビーが笑う。彼の服装は同年代から見れば、敬遠されがちなものだが、くるくるとしたパーマや少し垂れ下がった目、大きな鼻や口は整っている。よく見ると、けっこう格好いいとヤニックは思った。
 おまけに彼は背が高い。ヤニックは小学校の時からサッカーをしているが、身長はあまり伸びなかった。羨望の意味も込めて、見上げると、ロビーはまだ笑っている。
「そうだよ。今日はこれで終わり。そっちは?」
「俺も」
 クラブの練習は月曜と木曜しかない。練習のない日は、ティム達とプールへ行くか、誰かの家で遊んでいる。
「ヤニック」
 振り返ると、パックが立っていた。
「行くぞ」
 耳打ちするように言われ、ヤニックはロビーに、「また来週」と手を挙げる。
「ティムに見つかったら、うるさいぞ。あいつ、ロビーのこと嫌ってるんだから」
 出口へ向かいながら、言われた言葉にヤニックは一瞬、立ち止まる。
「別にしゃべるくらい、俺の勝手だよ」
「勝手だな。でも、俺らまでとばっちり食らうのは勘弁」
 校舎の片隅にあったサッカーボールを、パックは片足で蹴り上げると、そのままリフティングして進み始める。自転車置場には生徒達がたむろしていたが、ヤニックとパックの姿を認めると、すぐに場所を開けてくれた。パックが笑みを浮かべて、リフティングの技を見せる。
 ヤニックはそれを見ながら、自分の自転車を引いた。今日はパックの家で遊ぶ予定だ。クラスが違うため、ヤニック達は昼二時間で終わりだが、ティムとウェインは三時間目まである。喝采をもらったパックが横に並んだ。
「ティナ、可愛いよな」
「うん」
 パックがティナに気があるのは皆、知っている。ヤニックは先ほどの授業で、静かにノートをとっていた彼女を思い出した。栗色の髪と少し短い前髪、それから、大きめの瞳が印象的な子だった。ヤニックにはまだ、気になる子はいない。時おり、アピールをする女子がいるが、何となく付き合う気になることができず、いつも適当に受け流していた。
 どんな子が好みかと聞かれるのも困惑する。ヤニックは皆でサッカーをして、馬鹿な話で盛り上がることができればそれでいい。そこに異性の話が入ってくると、気まずくなってしまう。ただ、好みを聞かれたり、そういう話を振られて何も答えることができないと、ゲイだとからかわれるため、ヤニックは面倒だと思いながらも話には付き合った。

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