edge 番外編9 | ナノ





edge 番外編9

 一弥は貴雄のぺニスが前立腺を擦り上げた瞬間、射精した。すぐ後に貴雄が中へ出す。握り締められた手の温かさや、彼の吐息は胸が苦しくなるくらい幸せを感じさせてくれる。
 しばらく余韻に浸っていることはよくあるが、あまりにも長いため、一弥は貴雄を見上げた。
「なげーよ。もう抜いてくれ」
「はらむまで抜かないでおけばいいと思って」
 冗談であることは声音で分かる。一弥は吹き出した。
「馬鹿。はらむ前に腐るから抜いてくれ」
 一弥が笑っていると、貴雄はようやく身を引いてくれた。隣で仰向けになった貴雄に話しかける。
「子ども、欲しいのか?」
 俊治からほんの少しだけだが、貴雄と博人の生い立ちを聞いたことがある。貴雄はこんな生き方をしているが、本当は家族が欲しいのかと考えてしまう。囲っていた愛人も女性ばかりだった。自分との出会いは、彼にとってはマイナスだったのではないかと不安になる。
「いや、欲しくない」
 それから何を想像したのか、貴雄は笑い出す。
「俺に似てたらムカつくだけだが、おまえに似てたら犯しそうだろ」
「おまえな、それ犯罪だろ。それに、俺が言いたいのは……俺じゃなくて、その、他の女性とか、そういう」
 消えかける言葉に、貴雄がベッドへ肘をついて、こちらを見下ろした。彼は一弥の背中へ手を回し、一弥の体ごと彼の体へ乗せる。
「おまえがこの背中に背負ったものを、俺も背負っているはずだ。俺はおまえを裏切ったりしない」
 貴雄の手が優しく背中をなでてくれる。会社でも組内でも、うまくとけ込めなかった日々が続いた。それでも、自分自身の問題だから、と彼の介入を受けつけなかった。彼が歯がゆい思いでいたことは知っている。ただ物事には自分で乗り越えるべき問題というものが必ずある。
 一弥は自分の今の地位に満足していた。周囲も変わったが、いちばん変わったのは自分自身だ。敬司から貴雄以外見るな、と言われた通り、一弥は彼しか見ていない。つい最近も新入りから告白されたが、気にも留めなかった。
 貴雄には直接言わないが、周囲から聞かれれば、一弥は彼のことが好きだとこたえていた。それは、冷やかしで彼と付き合っているわけではないという一弥の本気と彼以外に興味はないのだと相手に分からせるための言葉だった。
「おまえ、また押し倒されそうになったらしいな」
 一弥は貴雄の髪を指先に絡めた後、そっと額へ触れた。
「押し倒されてない。その前に投げ飛ばしたから」
 貴雄の頬にキスを落とした。じんわりとした熱が体の中とペニスの先に集まるのを感じた。一弥は右手を背中のうしろへ回して、貴雄のペニスを確認する。彼自身も硬くなっていた。アナルへ誘導するように彼のペニスへ触れる。中へ入ると、彼が起き上がった。
 腰を抱えるようにして、貴雄が体を揺する。より深くうがってくる彼のペニスに前立腺を擦られ、一弥は喘いだ。二回目の射精は早く、一弥がだらりと彼の肩へ体をあずける。腰から背中へ移動した彼の手が止まった。
「一弥」
 顔を上げると、貴雄が瞳を輝かせている。
「クローゼットの扉、鏡張りにする」
 問いかけでも提案でもなく、決定事項だ。
「何で鏡?」
「ここに鏡があれば、おまえのお気に入りソファの上でしなくて済む。しかも、鏡のほうがよく見える」
 一弥には話が見えてこなかったが、ここは貴雄所有のため、好きにすればいいと言った。数週間後、鏡張りになったクローゼットの前で事に及び、一弥は貴雄が愛でるように鏡へ映る自分の背中を見つめていることに気づいた。
 悪い気はしない。背中の刺青こそ体も心も貴雄に捧げている証だった。

番外編8 番外編10(本編から5年後くらい/一弥視点)

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