edge 番外編3 | ナノ





edge 番外編3

「高岡さん」
 スモークフィルムで覆われた窓ガラスが降り、中にいた男がこちらを見た。翔太は高岡という名前に聞き覚えがあったが、誰かは分からない。
「せっかくだから、お昼でも?」
 高岡が言い、一弥は頷く。
「翔太も来いよ」
 断る暇もなく高級国産車の中へ押し込まれる。
「新入り?」
「あぁ、翔太、こちら、仁和会の高岡さん」
 あのビルに出入りしているだけでも、仲間達から羨ましがられているのに、貴雄達と食事した。今度は仁和会のトップだ。翔太は興奮して大きく頭を下げる。高岡はあまり興味がないようですぐに一弥と話し始めた。
 食事の後、一弥は高岡と煙草を吸い始める。日の高いうちからビールを開けたからか、一弥は酔っているようだった。
「おい」
「はい」
 高岡はすらりとした長身で、切れ長の瞳は色素が薄く、男にしては美しい。男と寝るとしたら、これくらい美人だったらいけるかもしれないと考えていたため、翔太の声は不自然に裏返った。
「新家沢まで車を出すから、一弥さんを芳川さんへ届けろ」
 一弥に対する態度とはまったく異なる。翔太は頷き、酔っ払っている彼を支えた。新家沢に住んでいるだけで、どれくらい裕福か分かる。正面出入口前で降ろしてもらい、タッチパネルへ触れると、一弥が指を置いた。
「すごい」
「すごいよね」
 一弥はそう言ってほほ笑む。最上階まで上がると、護衛の男達が翔太を止めた。
「マサのとこの新入りだ」
 一弥が言うと、すぐに拘束が外される。彼はふらつきながら格子になっている扉を引き、そこでも指紋認証のパネルへ触れた。
「翔太」
 貴雄にあいさつしてから帰るか迷っていると、一弥が振り返る。
「俺のCDは?」
 翔太は手に持っていた袋の一つを渡すため、一弥の元へ駆け寄る。ちょうど扉が開き、貴雄が出てきた。
「あ、お疲れ様です!」
 頭を下げると、髪をぽんぽんと叩かれる。見上げると、一弥が笑っていた。
「俺のCD」
 翔太が慌てて袋を差し出す。受け取ったのは貴雄だった。彼はけん制するように翔太を睨む。翔太はこの間とは異なる貴雄の態度に驚いていた。
「昼間から飲んで帰るとはいい身分だな」
 貴雄が一弥へ視線を移して、そう言うと、一弥は気分がいいのか小さく笑った。
「誰かさんが鞭を振るって働かせるからだろ。ストレスで大変なんだ。あ、肌荒れしてる。そういえば食欲もない」
 一弥は彼自身の頬に触れながら話す。
「翔太」
「はいっ」
「高岡と何食った?」
「あ、えーと、すきやきでした」
「食欲がない、か」
 貴雄が意地悪な笑みを一弥へ向け、一弥はそれにこたえるように笑みを絶やさない。扉が閉まった後、翔太はしばらくその場に立っていた。
「俺、何かまずいこと言いました?」
 護衛の二人は苦笑しながら、「大丈夫だ」と言う。
「俺、あの人のこと、全然分かんないかも」
 独り言が漏れる。一弥は不思議なほどつかみどころがなかった。

番外編2 番外編4

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