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edge13

 貴雄の言い分では、彼が一弥を拾った。彼が自分をどうしようと、自分には関係ないはずだ。かすかに漏らした嗚咽の後、一弥は大きな涙の粒をこぼした。何が悔しいのか、あるいは悲しいのか、分からなくなる。
 貴雄は一度、出ていった。あふれる涙と嗚咽をこらえられず、一弥は泣き続ける。考えても考えても、自分が分からなくなる。戻ってきた彼は、その手に手錠とポンプのついたアナル洗浄器具を持っていた。
 手錠で拘束された時、一弥は涙を拭いながら、貴雄の背中を見た。昨夜はよく見ていなかったが、彼の背中には唐獅子と牡丹の刺青があった。牡丹はまぶたの裏に残りそうなほど鮮烈な赤色だ。
 貴雄が乱暴に一弥を浴室へ押し込む。タイルの上で滑った一弥は強かに肘を打った。ひどいことをされる。そう思う一方で、一弥はわざわざ手錠をかけた彼の行動の意味を悟っていた。
 手錠をされたから、逃げられなかった。暴力で脅されたから、逃げられなかった。後からいくらでも、言いわけがきく。一弥は貴雄がわざと自分自身へ言いわけできる余地を残してくれたのではないかと考えた。
 それを優しさと名づけるなら、確かに貴雄なりの優しさなのかもしれない。だが、一弥にとっては、自分以外のものへ責任転嫁できる状況というのは、自分の卑怯さを認めるという屈辱でしかない。
「力、抜け」
 昨夜と同じように四つ這いの形で、一弥の尻は貴雄の目の前にさらされた。アナルの中は切れていなかったが、それでも初めて受け入れたせいか、今日は違和感を覚えていた。貴雄がそこへ洗浄器具の口を入れる。
 一弥には注入される液体の中身が何か分からない。ポンプのついた器具がアナルから出ていった後、注入された液体が内腿の間を流れた。一弥の体内で温まったのか、液体は冷たくはない。貴雄が小指サイズほどの何かをアナルへ入れた。
「っ、ん……」
 何を入れられたかは分からないが、一弥は便意を催していた。ゆっくりと足を動かしながら、両肘をタイルへついて悶える。出したい、と言葉にはできなかった。だが、アルコールのせいか、うまく体に力が入らず、差し込みをやり過ごせない。
「出そうか?」
 貴雄の指先が背骨にそって動く。その指先は尾てい骨から尻の割れ目に入り、先ほど入れた小指サイズの何かを押した。
「ひっ、あ」
「どうせ今日もろくに食ってないんだろう? ここで出してもいいぞ」
 笑いを含んだ声に、一弥はにじむ視界をうしろへ向けた。貴雄はまるで世界を征服したかのような表情でこちらを見下ろしている。一弥はくちびるを噛み締めた。いずれにしても、一弥はもう限界であり、隣にあるトイレまでは間に合わない。
 貴雄の指がストッパーをかき出す。彼はシャワーを一弥のうしろへ当てた。シャワーが流してくれなければ、一弥はもっと恥をかいたに違いない。泣きながら、中身を出し終わると、彼が目の前にしゃがみ込む。
「一弥、俺に見られるのが嫌なら、これからは自分で準備をしておけ」
 鼻をすすりながら、一弥にできたことはただうな垂れることだけだった。貴雄はバスタオルで一弥の体を適当に拭くと、寝室へ行けと言った。サイドボードの照明が照らす室内は、心地よい雰囲気だ。いつの間にかシーツが新しいものにされており、一弥はそこで行うことを想像して、手の拘束具を見つめた。
 バスタオルを腰に巻いた貴雄が、紙袋の中からジェルやコンドームを取り出し、ベッドの上に放り投げる。放心している一弥の目の前に、グロテスクな男性器のおもちゃが差し出された。
「まだうしろだけで射精できないみたいだからな」
 これでそのうち調教してやろう、と貴雄が言った。一弥が力なく首を横に振ると、手錠で拘束された腕を引っ張られる。
「嫌なら、俺のだけでいってみせろ」
 ベッドの上でまた四つ這いの姿勢をとらされた一弥は、アナルの中に入ってくる冷たいジェルに身を強張らせた。昨日と異なるのは、しばらくすると、中から熱くなるような感覚があったことだ。ビールのせいかと思ったが、むずむずするような感覚がアナルから背筋へ伸びてくるような気がした。
 貴雄の指が動き、増えていくたびに、一弥は小さな息を吐く。気持ちいいとは思えないが、彼の指は確実にむずむずした感覚を抑えてくれる。それが心地よかった。
「仰向けになれ」
 指を抜いた貴雄の言葉に従い、一弥は体を回転させた。アルコールとジェルに含まれていた媚薬のせいで、一弥の頬は赤く染まっていた。貴雄の指が立ち上がった乳首を押し潰すように動く。

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