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edge8

 ぱんっと尻を叩かれる。痛いはずなのに、なぜか体の力が抜ける。男の指先をアナルへ受け入れた状態で、一弥は涙を流しながら、声をこらえた。どうしようもない圧迫感と吐き気がひどい。
 一弥が力むたびに男は尻を軽く叩き、指をアナルの中で動かしながら、温水を入れていく。中へ温水が溜まれば、当然出したくなるが、男の指がストッパーになり、そう簡単に出すことはできない。
「暴れるな。中が傷ついてもいいのか?」
 男の言葉に、一弥は大人しくした。便意を催す際の差し込みが来る。一弥は動かなかったが、下腹に力を入れないようにひざを立てようとした。男がそれを阻止して指を動かす。
「っう、ぁ……」
「出そうか?」
 一弥は激しく首を横に振った。本当は出そうだったが、素直に認めるわけにはいかない。人前でアナルから中身を出すなんて、一弥の矜持に関わる。歯を食いしばり、中身を出さないようにこらえた。
 だが、男がアナルをふさいでいた指を抜くと、一弥は驚くほどあっさりと中に溜められた温水を垂れ流した。自分が信じられなかった。頭を抱えるようにタイルへ頬を当てる。熱い涙が流れた。
「全然だな。あと一回で終わりにしてやる」
 男はもう一度、シャワーからあふれる温水を一弥のアナルの中へ流し込み、一弥はほぼ透明の温水を垂れ流した。男同士のセックスが、受け入れる側のどこを使うのか知っていたが、それは知識だけだった。
 今なされた排泄に近い行為がアナルをきれいにするためのものだと理解したのは、男の手でベッドへ寝かされてからだ。男はサイドボードの引き出しから、潤滑ジェルとコンドームの束を取り出す。
 潤滑ジェルがアナルへ塗りこまれた時、一弥はもう抗う気力を失っていた。寒くはないのに寒いと感じ、痛くはないのに、男のすること一つ一つに痛みを感じた。男は面倒臭がらずに、一弥のアナルを指先でほぐしていく。
「声、出せよ」
 男の左手がからかうように、一弥のペニスへ触れる。そこは一弥の心を表すようにしなだれていた。男の指先が増えても、奇妙な圧迫感しかない。
「っあ」
 その指先が前立腺へ触れても、気持ちいいという感覚はなかった。男は一弥の前立腺を入念に確かめた後、自身の猛った熱にコンドームを被せる。一弥の足を引っ張り、仰向けからうつ伏せにさせられた。
「力は抜いておけ」
 また尻を軽く叩かれる。わけが分からなくて、泣けてきた。一弥は嗚咽を漏らすように体を大きく震わせ、涙を見せないように枕へ顔を押しつける。男の熱いペニスが、まだ狭いアナルへ押し入ってきた。
 一弥はくぐもった声で叫んだ。痛いという感覚を超えて熱い。このまま貫かれて死ぬかもしれないと思った。
「もっと力を抜け!」
 男が頭上で言うが、一弥は実際、指先すら動かせないほど、体力を消耗していた。
「一弥っ」
 また尻を叩かれる。整わない呼吸を繰り返しながら、これが終わるのなら、と一弥は強張った体をリラックスさせようとした。男が一弥を待つように、中に入れたまま動かない。しだいに明確になる男のペニスの大きさに、胸のあたりまで苦しくなってきた。
「動くぞ」
 シーツを握り締めた一弥は男のペニスがアナルの縁から奥まで貫くのを感じた。痛みと熱さで新しい涙が出る。規則正しい律動の感覚がやがて短くなり、男が中で果てたのが分かった。
 これで終わりだ、と思ったのはつかの間で、だらしなくベッドにうつ伏せている一弥を横目に、男が新しいコンドームをペニスへつけている。
「裂けなくてよかったな」
 男はそう言って笑うと、糸が切れた人形のような状態の一弥を、今度は仰向けにして犯した。男はまるで女を抱くように、一弥の乳首や首筋へキスをしながら、腰を動かす。
 男に殴られた頬は腫れ、腹には青アザができていた。男はそれを愛しむようになでながら、新しいコンドームの封を開ける。一弥はもう声も涙も出なくなっていた。

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