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 コンドームを右手の中指につけた夏輝は、腹の上にある大量の潤滑ジェルをすくい、自分のアナルへ押し込んだ。友則が企んでいる誕生日のことを恐れて、ヤケになっているわけではない。直太の純粋で真剣な気持ちにこたえたいと思った。
 夏輝はシャワーを浴びた時に、アナルの中を洗浄していた。だが、直太に指を入れてもらい、拡張する行為までは頼めない。好意を持っているからこそ、幻滅されたくはなかった。これが自分にとっても初体験だと知られることも、回避したかった。まっすぐな彼に一生、自分という重荷を背負って欲しくなかった。
 準備運動のように、指の本数を増やしていく。ずっと友則に脅されていたため、夏輝は自分自身で準備できるよう、事前に知識は持っていた。正面にいた直太が、背中側にまわり、後ろから抱き締めてくれる。うなじや肩へくちびるが触れる。指はすでに二本入っているが、彼の右手が太ももの間に入り込むと、夏輝は思わず声を上げた。
 自分でも不思議だった。直太が触れた場所が熱くなり、信じられないような声を上げてしまう。彼の人差指が重なるようにアナルへ入ってきた。そこは汚いから、と言う前に、彼のくちびるが左の耳朶を食んだ。耳元の吐息に体中が甘く痺れる。
 夏輝は直太の右腕をつかみ、アナルから指を抜かせた。彼へ向き直り、新しいコンドームの袋を開ける。彼のペニスは自分のものと同じように熱を持っていた。コンドームをつけ、誘導するように体をずらしたところで、彼の手がとめた。
「歯止めが、きかなくなりそうで、怖いです。俺、嬉しいし、幸せだけど、壊しそうで……怖い」
 直太の両手が肩を優しくつかんだ後、腰へと触れた。
「壊れたりしないから、大丈夫。俺が山崎としたいんだから、そんな気遣わなくていい」
 爆発しそうな欲望を抑えて、直太が自分を案じてくれることが嬉しい。
「っ……あ」
 指が三本入るくらいでは、十分ではないらしい。夏輝は痛みをこらえて、直太のペニスを受入れる。痛がれば、彼はやめてしまう。
「なつき、せんぱ、い」
 また雨滴のような涙が落ちてくる。先ほど告白してくれた時以上に、直太は感極まっていた。彼は彼の人生を惜しみなく犠牲にして、貯金まで引き出して、悪役から助け出してくれる救世主だった。夏輝が望めば、本当にそういう存在になってくれるだろう。だが、夏輝が彼に望むのは、これからも続く人生に小さな明かりを灯してくれる救世主だ。
「っあ、アア、や、やまざ……っ」
 痛みもあったが、直太の好意を直接受け取り、夏輝自身も泣いていた。夏輝にはただ一つ、思い出があればよかった。これから続く日々の中で、自分のためにここまでしてくれた人がいた、自分にもその価値があった、と思い出せたら、どんな日々でもやり過ごしていけると思った。
 直太の動きが速まり、夏輝は無意識に自分のペニスへ手を伸ばした。彼の手がその手に重なる。潤滑ジェルでべたついているが、気にならなかった。彼の口内で射精した時より、深く大きい波が来る。夏輝は射精すると、彼の動きもとまり、彼は小さな声を漏らした。
 直太が体を引き、もう一度、突いてくる。悲鳴のような声が出て、彼が謝った。射精の余韻にひたる間もなく、彼は腰を動かし始める。
「っあ、あ、ん、あ」
 まだアナルに痛みがあったが、直太がもたらす圧力と鈍い心地良さが上回り、気にならなくなる。彼が手でペニスも愛撫するため、夏輝は三度目の絶頂を迎えようとしていた。長距離の移動と空腹からか、射精しながら意識が遠のいていく。彼を心配させてしまう、と思ったが、二度寝ができると分かった朝のような安堵の中、夏輝は意識を手放した。


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