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 手は涙で濡れていた。夏輝の手が握り返してきた。それが合図のように思えて、直太は彼の首筋へくちびるを移動させた。うっすらと汗ばんだ肌からせっけんの香りがしてくる。指先同士を絡めて握っていた右手を離し、彼の脇腹から下着へと触れた。
 自分の中心部は確かめるまでもなかった。夏輝も下着の上から触れて分かるほど、興奮していた。真新しい下着を引いて、彼の左足から脱がせる。
 そのまま、体を重ねるだけで、満たされた。彼の体温と鼓動を感じるだけで、本当に幸せだと思った。夏輝の手が、勃起しているペニスに触れる。直太はその手を押さえて、体をずらした。仰向けに寝転んでいる彼のペニスへ触れて、顔を近づける。彼は首を横に振ったが、直太は口を開けた。彼がしてくれたように、自分も彼にしたい。
 舌で先をなめたり、喉の奥でくわえたりして、直太は夏輝に愛撫を続けた。彼は声をこらえていたが、短い呼吸の音だけで、彼が感じていると分かった。やがて口の中で彼のペニスが震え、彼が、「はなして」と懇願してきた。
 直太は夏輝がしてくれたことと同じことをしたかった。くわえたまま、軽く吸い上げると、少し上半身を起こしていた彼の体がベッドへ沈んだ。あ、あ、と短く叫んだ彼のペニスから出る精液を飲み込む。
「っな、なんで」
 腕で顔を覆った夏輝の目尻には、涙があった。
「夏輝先輩が、してくれたことだから。俺も、先輩にしたい」
 隣に寝転んで、恥ずかしがる夏輝を見つめた。涙で赤く腫れていても、彼はきれいでかわいい。右手を伸ばして、彼の髪に触れ、彼の輪郭をたどるようにして、指先で耳から首、あごから肩、肩から背中へと動かす。
「くすぐったい」
 夏輝が身をよじり、直太はほほ笑んだ。彼も直太の体の線をたどるように指先で触れてくる。
「やまざき」
 はい、と返事をしたら、夏輝は、「お願いがあるんだけど」とささやいた。
「何でもします」
 即答すると、夏輝は笑った。
「断ってもいいよ……あのさ、俺のこと、抱いてくれる?」
 右手の人差指がちょうど夏輝の腰を滑っているところだった。その指先をとめて、しばらく、言葉の意味を考える。
「あ、はい」
 直太は体を動かし、左手を夏輝の体の下へ滑り込ませて、彼の体を抱き締めた。胸のあたりで彼が声を立てて笑う。
「ちがう、抱き締めるんじゃなくて、抱いて欲しいんだ」
 こちらを見上げた夏輝は、密着している体の間に手を入れて、直太のペニスへ触れた。自分でも興奮していることが分かる。具体的にどうするか、考えたことはなった。だが、彼を抱く想像なら何度もしていた。
 夏輝が体を伸ばして、キスをした。下くちびるに軽く触れるだけのキスは、小さな音を立てた。彼がもう一度、体を伸ばして、キスしようとする。直太は彼の体を押さえ込むようにして、体勢を変えた。彼の望みは何でも叶えたい。だが、その望みが自分の望みと同じというのは都合が良すぎる。
 理性は、夏輝の話を聞くべきだと訴えてくるが、視界から入る情報を拒否できない。誘うように伸びてきた細い腕をつかみ、陶然として、彼の体を感じた。むさぼるように、キスを重ね、肌に触れながら、目の端に映ったミカンゼリーを手にする。
「それ、食べるんじゃないよな?」
 夏輝の冷静な問いかけに、直太は顔が熱くなった。
「すみません、俺、初めてで、その……」
「たぶん、そこの引き出しに必要な物、入ってる」
 夏輝の指したサイドテーブルの引き出しを見ると、彼の予想通りの物が入っていた。ボトルに入った潤滑ジェルとコンドームを取り出す。ボトルのキャップを開けたら、中身が大量に彼の腹の上に落ちた。冷たいのか、彼は身をすくませた。
「あ、先輩」
 謝ろうとすると、夏輝は苦笑して、コンドームの袋を破った。


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