just the way you are12/i | ナノ


just the way you are12/i

 直太がスマートフォンだけを持って、生徒会室から飛び出した。今の彼には理解できないだろうが、夏輝は心から安堵した。これ以上、彼を傷つけなくて済むからだ。
「この手、切り落としたいけど、それはできないな」
 右手首をつかんでいた友則は、裸になれ、と続けた。
「早くしろよ。制服、ダメにしたくないだろ?」
 友則がホワイトボードの向こうに立てかけてある竹刀を手にした。彼の恋人になると言ってから、ひどい暴力は受けていなかった。竹刀で叩かれるのは、たいてい背中だ。彼の手が背中をなでた。
「きれいになったのに、またアザだらけにするのは可哀想だけど、お前が悪いから仕方ない」
 友則の手が背中から左の腰へ落ち、彼はわき腹へキスをした。
「手、ついて」
 誰の目も見ることができない。彼らはこれから起こることを期待して、意地の悪い笑みを浮かべているだけだからだ。長机に手をついて、痛みに歯を食いしばりながら、目を閉じる。そのうち、痛みに耐えきれなくなって泣いても、彼の気が済むまでは許してもらえない。謝ることを強要されて、夏輝は竹刀で叩かれるたび、ごめんなさいと口にした。
「そういえば、あいつのくわえる時、ラップも何もしてなかった。しかも、飲めって言ってないのに飲んでた。何で?」
 友則が手を休め、そう問いかけてきた時、夏輝はその場に倒れこんだ。嗚咽のせいで呼吸が荒くなる。背中は焼けるように痛い。この後、生徒会役員たちから暴行を受ける。少なくとも、以前はそうだった。裸の状態で殴られたり、蹴られたりすることが、自尊心を傷つけ、精神的に深い傷を与えることを、彼はよく知っている。
 だから、何を言っても無意味で、正直に答えると、また直太を巻き込みかねない。
「……飲むのが、好き、だから」
 左目からあふれた涙は、目頭に溜まり、右目のまぶたから床へと流れていった。しゃがんだ友則が髪をつかむ。
「へぇ、精液飲むのが好きになったのか。なら、おまえの誕生日に十八人、集めて全員の精液飲ませてやる。それから」
 友則は髪を放し、立ち上がると、竹刀で夏輝の尻の割れ目をなでた。
「おまえを犯す。初めての時は狭くて、滑りも悪いらしいから、まずはこれ突っ込んで、おまえの血で滑りを良くするよ。すごい誕生日プレゼントだろ?」
 夏輝は泣きながら、許しを請う。友則の足にすがり、誕生日は彼とだけ過ごしたいと言い募った。
「そんなに頼まれたら、断れないな」
 そう言って引き下がるような人間ではないと知っているから、夏輝はまだ彼にすがっていた。彼はスマートフォンを操作して、先ほどの映像を再生する。
「なぁ、これ、おまえの両親に送ったらどうなるかな?」
 夏輝はまだ友則と友達だった頃に、悩みを打ち明けていた。小学校二年の時に、好きな同性の子の名前を母親に告げてしまったこと、家では異性に興味があるふりをして、同級生に偽りの彼女を演じてもらったこと、日常生活の些細なやりとりを相談していた。
「この一年の親と先生にも送る? 大事になりそうだ」
 映像は第三者が見れば、嫌がってやめてほしいと懇願する直太に、夏輝が無理やり行為をしているようにしか見えない。これを両親に見られたら、失望させるだけでは済まないだろう。
「学校、退学になるね。俺が停学処分で済むようにしてあげる。だから、俺のすごい誕生日プレゼント受け取るだろ?」
 夏輝は床に手をついた。卒業したら解放されるという考えが間違いだった。友則はどこまでも拘束するつもりだ。停学でも退学でも関係ない。どこまで受け入れるか、試している。受容できなくなって壊れたとしても、それが彼の理想の恋人なのかもしれない。



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