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 自分を恥じたことは何度もある。だが、消えてしまいたいと思うほど恥じたのは初めてだった。直太は夏輝を見ることができなかった。こんなふうに彼を従わせたいと思っていない。これは望んだことではない。そう思うのに、体が勝手に反応して、彼の口の中へ射精していた。
 ためらいなく性器をくわえた夏輝を、救えると信じていた。大人になった時、笑って語る思い出に、彼との出会いが含まれると思っていた。周囲の嘲笑は聞こえない。ただ、視線だけを感じた。おまえも同じだ、と言われている気がした。
 直太は泣いている自分を消したかった。屈辱的な状況の中で、こんなことは望まないと何度も繰り返しながらも、夏輝を引き離して、その場から一緒に逃げることができなかったからだ。泣くことしかできないなんて、夏輝を失望させているだろうと思った。
 夏輝の舌の感触やくちびるの動きが嫌だった。気持ち良かったが、同時にとても嫌悪した。やめてください、と繰り返しながら、戦うことも逃げることもできなかった自分も嫌悪した。彼の手が制服のズボンのチャックを上げた。そして、まるで何事もなかったかのように、彼は衣服の乱れを整えてくれた。怒りや憐憫に浸る前に、友則がスマートフォンを差し出す。
『っや、やめ、くだ、ぁ、やめてくださ……』
 情けない自分の声を聞いた瞬間、直太はその場から逃げ出した。電源ボタンを長押ししながら、鞄も夏輝もその場に置いて、生徒会室を飛び出し、走った。
 スマートフォンが折れそうなほど握り締め、直太は校庭には行かず、ひたすら駅まで走っていた。とまったら、また泣きそうだった。にじんだ視界は汗のせいだと言い聞かせた。学校の最寄り駅を通り過ぎ、このまま限界まで走って消えたいと思った。

 家が見えてきた時、直太はペースを落とした。息が乱れて苦しく、気分は最悪だった。鍵は鞄の中にあり、インターホンを押して母親に開けてもらうしかないが、今は誰とも会いたくなかった。
 扉の前で手の中のスマートフォンを見つめる。今さら、生徒会室に残してきた夏輝のことを考えた。あれはすべて、戦わなかった彼が招いた結果だ。嫌なら嫌だと拒否しなかった彼が悪い。現状に甘んじている彼が、悪い。
「っくそ、チクショウ!」
 直太は泣く前に扉を叩いた。出てきた母親が驚き、「どうしたの?」と聞いてくる。
「ごめん、気分が悪いから、少し寝てくる」
 急いで階段を上がり、部屋の窓と扉の鍵を閉めた。枕に顔を埋めて、嗚咽を殺す。あれは諦めている瞳だった。戦って、打ちのめされたか、敵わないと分かって、諦めた。戦わなかった自分が、夏輝を責めることなどできない。彼は今も友則の前に立ち、諦めることで己を守っている。その彼を置いてきた。
 夏輝に抱く好意や助けたいという決意が、軽くて安っぽいものに思えた。彼の英雄になるなら、今すぐ生徒会室へ戻って、彼を連れ出せばいい。だが、直太はベッドから起き上がることができなかった。彼が受けている罰を想像すると、怖くなる。
 椅子に押さえつけられた時の複数の腕の力、自分をあざ笑う視線と彼の口に射精している自分を思い出し、直太はゴミ箱の中へ嘔吐した。
 冷房のついていない部屋は異常な暑さだ。汗と涙と吐しゃ物が落ちていくゴミ箱を見ながら、先輩が言ったように、卒業までやり過ごすほうが楽だと思った。夏輝もそれを望んでいるなら、自分は何もしないほうがいい。
 助けに行くべきか、やり過ごすべきか、直太は結論を出せないまま、意識が遠のいていくのを感じた。


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