meteor25 | ナノ





meteor25

 何度目か分からない射精の後、由貴は目を閉じる。結ばれている所の熱はまだ冷めない。余韻を楽しむように、アランがゆっくりと突く。
「っはぁっぁあ……」
 由貴が声を漏らすと、アランも大きな溜息を吐いた。彼は由貴の中から出ていくと、サイドボードの前に置かれたミネラルウォーターを手に取る。それで喉をうるおし、由貴にそのペットボトルを与えた。
「お腹も空いた」
 由貴はペットボトルを空にすると、ベッドの端に座っているアランに言う。
「俺も」
 それから、二人は声を上げて笑った。

 誤解の解けた週末、二人はブランチを食べ、ソファに座ってテレビを見た。朝から激しい運動をしたためか、由貴はいつの間にか眠ってしまった。
 目が覚めた時、暗い部屋の中でアランが隣にいることを確認して、また目を閉じる。薄手のタオルケットの下で、彼の手を探す。大きな掌が由貴の手に触れ、握り返してくる。由貴は目を閉じていたが、楽しい夢を見る子どものように、口元に笑みを浮かべた。


 パソコンの画面から目を上げた由貴は、印刷されてきた紙を手に取る。不意に外へ目をやると、青々とした雑草が伸び放題になっているのが見えた。気晴らしに後で雑草抜きでもしよう、と由貴は手元の紙にまた目を落とす。
 ゲルベ大学の環境科学部の講師へ直接メールをしてから二週間が経った。返信が遅いのは今に始まったことでもないため、由貴は気長に待っていた。ようやく届いた返信内容を印刷した由貴は、一度ざっと目を通す。
 あれから、アランの言葉に答を見出した由貴は、考えた末に通訳でも翻訳でもない道を選ぶことにした。
 テーブルの上に鈍く光る鍵は二つに増えている。由貴はその一つにそっと触れた後、印刷した紙をテーブル上に置き、庭へと出た。
 湿度は低く、風が吹くと心地良い。由貴はガレージからバケツを取って来て、さっそく雑草抜きを開始する。
 あの週末明けの月曜日の夜、アランはすぐに鍵を届けてくれた。合鍵はこれ一つだけだ、と聞いていた。
 ばかげているとは思う。だが、由貴はアランとの関係が、鍵という目に見えるものを通して確かなものになるのがとても嬉しかった。
 クリスとはあれ以降まったく会うことはなかった。週末にアランの家を訪れた時、いつの間にか客室はほとんど空に近い状態になっていた。クリスが自分の物を引き取ったのだろう。アランは由貴にあの部屋を自由に使っていいと言ったが、由貴はそのままにしている。
 太陽の下にいると、やはり汗ばむ。由貴は額の汗を腕で拭い、立ち上がった。バケツが雑草でいっぱいになったため、庭の隅にあるコンポストへ持っていく。
「ヨシ」
 自転車を押しながら帰って来たトーマスが手を挙げる。
「おかえり」
 バケツを持った由貴の姿に、トーマスが言う。
「そんなことしなくていいのに」
「僕がやりたいからいいんだ。それに、疲れたから今日はもうおしまい」
 トーマスは自転車をガレージの壁に立てかけると、由貴からバケツを取って、ガレージ内へとしまった。
「ゲルベ大学から返事があったよ」
「マジで?」
 庭からリビングへ入り、由貴はバスルームで手を洗う。
「うん。やっぱり語学試験は免除。必要な書類だけ出せば応募人数制限もない学科だから大丈夫そう」
 開け放した扉の前に立っているトーマスが、自分のことのように喜んでいる。
「良かったな! じゃあ、十月からは大学生か……寂しくなるな。俺も来年か再来年にはアメリカ留学、頑張らないと」
「トーマスならできるよ。大丈夫」

24 26

main
top


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -