meteor23 | ナノ





meteor23

「分からないって言うが、そうじゃないだろ。決めるのが怖いんだろう? 自分で決めたことには常に責任が伴う。おまえはただ怖いだけなんだ。だが、おまえだけじゃない。人は自分の道を行く時、必ず迷う。皆と違う道に進んでもいいのか、皆と異なる方向へ進んでもいいのか、不安になるんだ。ヨシタカ、人と違うことはしんどいことかもしれない。皆と同じ道を行くほうが簡単なことかもしれない。それでも、おまえはもう答を出してここへ来ている。それは結局、おまえはおまえ自身でありたいと願っている証拠だ」
 アランの言葉が由貴の心に明かりを灯す。次から次へあふれる涙を拭うことなく、由貴は嗚咽を上げて泣いた。うやむやにして、ベッドの中で愛撫されれば、不安は一時消えてしまう。だが、現実へ立ち返れば、その不安は解消されず、より深い闇となる。
 突き放されれば、傷口も浅くて済むのに、どうして一番欲しい言葉を一番欲しい人から聞いてしまったんだろう。
 愛していると告げたら、この関係は壊れるだろうか。由貴はそれでも言わずにはいられなかった。
「僕、僕も彼みたいな、プロになれば、あなたに、釣り合うかな……」
 嗚咽のせいで乱れる呼吸を整えながら、由貴はアランの顔を見ずに言う。アランがしゃがみ込んで由貴の瞳を見ようとする。言葉の意味を把握しかねているようだった。由貴は顔をそらす。
「どうしたら、あなたのただ一人になれる?」
 拗ねているように見えたのか、アランは小さく笑う。
「そんな言葉を吐かせるくらい、俺の態度は悪かったか?」
「え?」
 由貴がアランを見ると、彼は強い意思に満ちた瞳で由貴を射返してくる。
「愛してる」
 大切な宝物を扱うように、アランは指先で由貴の頬を撫でる。
「おまえ以外、もう何もいらない」
 軽く触れるだけのキスの後、アランが微笑む。
 クリスの存在を知る前なら、由貴はたぶん諸手を挙げて喜んだだろう。だが、今は無邪気に答えることなどできない。
「僕は週末だけの相手?」
 由貴は内心、自分の声音の刺々しさに驚いた。別にアランに非があるわけでもないのに、まるで彼を詰問しようとしているみたいに聞こえる。
「どうしてそう思う?」
 嫉妬心むき出しの自分に呆れて、由貴は黙り込む。
「理由があって、そんなことを聞くんだろう? 俺の何がそういう誤解を生んでいるのか知りたい」
 真摯なアランの態度に、由貴は小さく口にする。
「鍵」
「鍵?」
 アランが考えている。その姿に由貴はもどかしさを覚えて立ち上がる。客室まで彼の腕を引っ張り、その扉を開く。
「この部屋は彼の部屋? あのベッドで彼とも寝るの?」
 なんて醜い言い方なんだろうと、由貴は自分の口から出た言葉を悔いた。だが、アランは目を丸くした後、笑いをこらえながら壁に手をつき身悶えている。
 あまりにも笑うので、むっとした由貴が声を上げようとした。その瞬間、彼は由貴のことを抱き寄せて、強く抱擁する。
「ヨシタカが嫉妬してくれた!」
 由貴はかぁっと頬が熱くなるのを感じる。さんざん笑って、言うことがそれなのかと、由貴はアランの腕の中で暴れた。
「だって、クリスはここの鍵、持ってる。でも、僕は持ってないし、この部屋、何かあなたのイメージとは違う部屋だし、でも、彼はあなたに釣り合うし、一緒に仕事してるし、僕は、敵わない」
 たどたどしく言いたいことを言った由貴は、一呼吸ついてからさらに言い募る。
「僕はあなたのたった一人がいい。そうなれないなら、あなたを愛し続けることは辛い。不確かな関係を続けるのは嫌だ」
 由貴はまた泣きそうになる。だが、今度はアランの瞳から目をそらすことなく言った。

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