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meteor10

 由貴はシャワーを浴びたいと思ったが、何となく切り出せず、悩んでいる間にアランが衣服を脱ぎ始めた。こういう時、男同士の間には何の恥じらいもない。黒いシーツのかけられたふかふかのベッドの上で、由貴は彼を待つしかない。
 受動的だね、と今までの経験から言われたことを、由貴は不意に思い出す。経験豊富に見えるアランに失望されやしないかと一瞬考える。彼にとっては、遊び慣れている相手のほうがいいのだろうか。
 由貴は自分から上に着ているものを脱ぐ。シャツの襟首部分が耳に引っかかり、慌てていると温かな指先がシャツの裾をまくし上げる。彼の小さな笑い声が聞こえる。
「緊張してるのか?」
 由貴は返事をしないで、そっぽを向いた。アランが、その由貴の乱れた髪を愛しそうに撫でる。彼の指先がつと胸の間を落ち、カーゴパンツのゴム部分にかかる。由貴はその手に自分の手を重ねて、下着ごとパンツを脱いだ。
 軽く触れるだけのキスに応えて、由貴はゆっくりと体を後ろへ倒していく。由貴はアランの愛撫を感じて、気持ちが高まるのを意識した。すると、アランが何かに気づいたように由貴から離れる。どうしたのか、と目で問うと、彼は待つように言い残して部屋を出ていく。
「ごめん」
 中断したことを謝ったアランは、その手にセックスには欠かせないものを持っていた。由貴はそれを確認して、やはり彼は慣れているのだと思う。
 そう思うと気持ちが少し暗くなる。別に自分が特別だと考えているわけではない。たとえアランが他の関係を持っていたとしても、由貴には異議を唱える権利などない。
 由貴が沈んでしまうのは、由貴自身がすぐに終わってしまう関係を始めてしまうことに起因する。ふらふらしたくない、だらだらと不特定の人間と付き合いたくない、そういうふうに思うのに、変わることのできない自分。高校生の時から少しも変わっていない。
 由貴の沈んだ思考回路を断ったのは、アランの指先だった。彼の中指が由貴のアナルへと侵入してくる。
 アランは由貴の良い所を探そうと、指の腹の部分を浅く深く動かす。そのたびに彼の人差し指と薬指が撫でるように敏感な肌の上を行き来して、由貴はくすぐったいと笑った。笑うと、緊張が緩んで、彼がその隙に指を増やす。
「俺のも触って」
 由貴はアランの手に引かれるまま、彼の高ぶる中心へと触れる。由貴は彼のペニスに触れることで、同じ性を持つ彼に興奮した。
 熱く脈打つそれで犯して欲しいと、由貴はアランの瞳に告げる。いやらしいという考えはない。互いの熱のために汗ばむ体を重ね合わせて、乱暴なくらいのキスをして、まるでスポーツのようにセックスをする。由貴は何もかも奪われてしまうような激しい行為が好きだ。
 アランが由貴のアナルにペニスを入れ始めた時、由貴は自分の体がその久しぶりの感覚を喜んでいるように思えた。何も考えなくていい、ただ欲望を追うだけのこの瞬間、由貴は満たされる気がする。
「っあ……あぁっ」
 アランの動きが激しくなり、由貴はその背中に回した手に力を込める。目の前のヘーゼルナッツ色の瞳は、今は閉じられていて、彼の表情は苦しげに見える。
だが、それは苦痛の表情ではなく、快感を追おうとする悩ましげな表情だった。
「……っあぁ」
 由貴が小さく呻き、吐精すると、少し遅れてアランが由貴の中で射精した。互いの荒々しい息遣いだけが響く。
ビリビリと駆け抜けた快感が消えると、心地良い気だるさが体に残る。
「すごくいい」
 アランがささやいて、由貴の上に覆い被さる。その重みを受けながら、由貴は彼の髪を指先ですいた。
「もう一回して」
 由貴が鼻先をその髪に埋めながら言うと、アランが不敵に笑う。由貴も微笑んで返した。

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