わかばのころ 番外編19/i | ナノ


わかばのころ 番外編19/i

 背中越しの熱に気づいて、目が覚めた。
「んー」
 若葉は潮のマッサージに声を漏らす。腰のあたりを押されると、痛みと気持ちよさが同時に襲ってきた。
「若葉、無理はするなよ」
「うん、大丈夫、そこ、もう少し押して」
 枕を握り締めて、若葉はもう一度、目を閉じる。潮の手はふくらはぎまで下りた。
「俺もするよ」
 上半身をそらし、足をもんでくれる潮へ声をかける。
「俺はいい」
 隣に寝転んだ潮は、髪をなで、背中へ手を滑らせた。若葉は彼の顎へキスして、そのままくちびるを頬へ移動させる。総合商社のヘルプデスクをしている彼は、定時で帰れることが多く、両親の面倒もよく見てくれる。若葉は休みの日でも、農業指導へ出ることもあり、彼には色々と負担をかけていると感じていた。
「んっ」
 潮は若葉から誘わない限り、何もしない。最初は飽きられたと思い、それが原因で体調不良にまで陥った若葉だったが、何もしない理由が、忙しい自分に無理をさせたくないという彼の思いからだったと分かり、セックスをする時は若葉から誘うようになった。
 まさぐるように動く潮の熱い手を握り返し、若葉もまた彼の性器へ手を伸ばす。潮は就職してからピアスをすべて外したが、若葉は彼からもらったリングピアスを首からさげていた。そのピアスと乳首をなめながら、彼が潤滑ジェルを使ってアナルを解していく。
 若葉は声をこらえて、自分の手で口元を押さえた。緩く立ち上がった自分の性器にも、潮がコンドームを装着してくれる。彼は若葉の手を引き、くちびるへキスをした。舌が絡み、彼のペニスを受け入れる。
「あ、っア、ン」
 重ねたくちびるの間から、吐息のように声が漏れた。大きな声を出してはいけないと思うのに、快感で理性が飛んでいく。潮の舌がくちびるをなめ、口をふさぐようにキスを受ける。
 潮は時おり、激しく抱いてくるが、若葉を傷つけるようなことはしない。彼の腰が動き、若葉の中を擦り上げるたび、若葉はベッドシーツを強く握る。
 絶頂を迎える瞬間、目を閉じた。汗ばんでいる潮の左肩へくちびるを当てる。彼の指が腹の肉を軽くつまみ、もむように動いた。
「や、うーちゃん、くすぐったい」
 若葉は潮を引き離し、腹を守るようにうつ伏せになる。
「コンドーム、外せ。シーツが汚れるぞ」
 渋々、体を起こして、使用済みのコンドームを外し、ティッシュで汚れを拭う。その間にも、潮が腹の肉へ触れてくる。くすぐったくて思わず笑うと、潮は嬉しそうな表情を見せた。
「何で嬉しそうなの?」
「若葉がちっとも変わらないから」
 丸めたティッシュをゴミ箱へ入れて、シーツのしわを伸ばした潮が真面目な顔でそう言った。ちっとも変わらないというのは、褒め言葉なのだろうか。若葉は腹の肉を見て、「俺、昔から丸かったってこと?」と首を傾げる。
「ちがう、ちがう。俺が言ってるのは、おまえの目のこと」
 潮に抱き締められた若葉は、彼の瞳を見上げた。
「おまえの目を見てると、すぐに分かるんだ。俺は愛されてるなって」
「当たり前だよ、俺、うーちゃんのこと、大好きだからね」
 気にしている体型のことではないと分かり、若葉は安心した。
「明日、皆でモールまで買い物に行こうか?」
「うん」
 仰向けになった後、若葉は潮の右手を握る。
「うーちゃん」
「うん?」
「いつもありがとう」
 若葉は眠るために目を閉じる。隣で潮が動く気配があった。
「若葉もいつもありがとう」
 額に優しくキスを受け、若葉は口元を緩ませた。


番外編18

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