エウロパのうみ15/i | ナノ


エウロパのうみ15/i

 事前に調べたのだろうと分かったのは、明達が迷うことなくホテルのほうへ向かったからだ。無言のまま、光っているパネルから部屋を選び、奥で鍵を受け取る。部屋まで入ったところで、ようやく手を離された。彼はオートロックの鍵か確かめてから、ベッドのほうへと進んでいく。
 善のところで酒を飲んだせいか、時和は喉が乾いていた。明達は外から見える造りになっているバスルームへ視線を向ける。
「先に浴びる」
 ベッドに腰かけていた明達は、靴と靴下を脱ぎ捨て、ジーンズを下ろす。上も脱ぎ、ボクサーパンツだけになると、堂々と時和の目の前を横ぎった。直視してはいけないと思いながらも、時和は彼の裸を見つめた。
 唾液を飲み込み、瞬きを繰り返す。明達には恋人がいる。自分は彼にどんな関係を望んでいるのだろう。今から起こることが、どんなことなのか分かっている。とても怖いのに、興奮している。
 時和は明達の衣服を拾い、きれいにたたんだ。メールの着信を知らせるランプが点滅しているが、時和はそれを無視した。ベッドに座り、そこから見えるバスルームへ視線を向ける。湯気でほとんど見えないが、彼の顔は認識できた。バスタオルを巻いて出てきた彼は、硬い表情をこちらへ向ける。
「……準備できるか?」
 できないと言ったら、きっと先に進めない。そして、もう二度と起こらない。時和は頷いて、衣服を脱いだ。自慰行為しかしたことがない、と言えなかった。サイドテーブルの引き出しを確認すると、コンドームや玩具に混じって、アナルの洗浄に必要な物があった。時和はそれを慣れた手つきで袋から取り出し、バスルームへ入る。
 自慰行為の延長で、指をアナルへ入れることはある。アナルを洗浄する方法は知っていた。だが、その後は、自分の指ではどうしようもできなかった。
 腹部の圧迫感をこらえてから、便座へ座る。二、三度繰り返してから、体をきれいに洗った。自分の指では前立腺を探せなかった。射精する時は、ペニスを擦っているだけだ。こんなところに、受け入れられるのか、という思いで、ふと明達を見る。
 明達もこちらを見ていた。切れ長の瞳に見つめられ、時和はくちびるを結んだ。彼は勃起しているペニスを隠しもせず、こちらへやって来る。体を拭かないまま、ベッドの上へ押し倒された。彼とは異なる貧相な体を恥じた。だが、彼は首筋と乳首へキスした後、時和のペニスをつかんでたたせる。
「これ」
 引き出しから取ったゼリー状のローションを腹の上へ置かれた。
「おまえ、初めてじゃないよな?」
 時和は考えもなく、頷いたりしないが、この時ばかりは、すぐに頷いた。少しでも怯めば、初めてだと悟られて、明達はやめてしまう。時和はローションをコンドームを被せた指へ絡め、腰を浮かして、自分で慣らした。指一本でもきついそこを、必死で広げる。
「いやらしいな」
 明達の前で足を広げ、アナルへ指を突っ込みながら腰を動かしている。鏡はないが、時和は羞恥心から泣いていた。彼の言葉に、ペニスが反応する。可愛い、と言う彼のかすれた声が耳元で聞こえた。入れたい、と言われて、まだ広がっていないアナルから指を抜く。
 それがどんなものか、想像して抜くことはあった。甘美で心地よいものなのだと思い込んでいた。だが、実際は激しい痛みしかなかった。
「って、時和、もっと緩めろ、痛、いた」
 明達は一度退き、少し萎えてしまったペニスへ触れながら、「最近してなかったのか?」と尋ねてくる。時和は頷き、うしろからなら入れやすいから、と四つ這いになり、腰だけを掲げる姿勢を取った。



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